平成22年4月22日
No.10-071
株式会社 いよぎん地域経済研究センター
宿泊客数の減少にどう立ち向かうか?
~競合温泉地から考える道後温泉の未来~
株式会社いよぎん地域経済研究センター(略称IRC、社長 原 正恒)では、このたび下記のとおり、道後温泉の現状について取りまとめましたので、お知らせいたします。なお、詳細については、2010年5月1日発行の「調査月報IRC・2010年5月号」に掲載いたします。
記
【調査概要】
道後温泉の現状について把握するため、関西圏の温泉地を中心に宿泊客数の推移をヒアリング調査した。(調査対象温泉地:道後温泉含む合計9ヵ所)
【調査結果要旨】
- 宿泊産業の市場規模は、1991年に約4.8兆円に達したものの、08年は約2.9兆円とピーク時の6割程度まで減少している。ホテル業が微増傾向にある一方、市場の大半を占める旅館業は同期間に約3.5兆円から約1.7兆円と半減しており、旅館業の長期的な衰退が宿泊産業の市場縮小をもたらしたと思われる。
- 道後温泉の旅館数は1989年から09年にかけて半減し、比例して部屋数、収容人員とも約3割減となった。こうした規模の縮小などが影響し、年間宿泊客数は1992年から08年にかけて3割以上の大幅減と、長期的な減少傾向に歯止めはかかっていない。ただし、年率では数%の落ち込みに過ぎないため、一時的な減少と捉えて対応が後手に回ってしまった可能性もあるのではないかと推測される。
- 他の温泉地の状況をみると、まず湯布院や黒川温泉の成長ぶりが目立つ。両温泉地とも個人客や女性客をターゲットに、ハード・ソフト両面の整備を進めており、かつての団体客需要に特化した温泉地とは一線を画している。また、草津温泉は知名度の高さや泉質の良さといった強みを武器に、1992年以降横ばいでの推移が続く。今回の調査では、これらの温泉地以外の宿泊客数は道後と同様の傾向がみられた。
- 今後道後温泉には、「道後にしかない魅力づくり」「滞在時間を延ばす工夫」「地域から愛される温泉地を目指す」ことが求められよう。各旅館や行政の努力に頼るだけでなく、様々な分野や立場の人たちの協力を得て、地域一体となった取り組みが必要ではないだろうか。奇しくも今、ドラマ「坂の上の雲」放送で道後温泉には大きな追い風が吹いている。このチャンスを最大限に生かし、かつ一過性に終わらせないためにも、地域が結束して先を見据えた取り組みがなされることを期待したい。