このシリーズは、愛媛県内各地の“まちづくり”への取り組みを、中心となる「人やグループ」にスポットを当てて紹介している。今回は、しまなみ海道沿線で「海と島に来島大橋映える町よしうみ」のまちおこしグループを取り上げる。
-KKPとは?-
しまなみ観光ブームは去ったと言われている。海道沿線の主要施設の2000年度観光客は前年度比44%も大幅に落ち込んだ。その中で吉海町のローズ館は、10%の減少にとどまっている。その背景には、KKPを中心とした吉海町の役場職員やローズ館の山口真佐美館長および多くの町民の献身的な努力がある。
KKPとは企画観光プロジェクトの頭文字を取ったものである。吉海町役場の若手精鋭達を集めたプロジェクトチームの名前だ。Iターンでこの島にやってきたローズ館の山口館長の呼び掛けで結成された。総勢9名〔初代リーダー池田道保さん(教育委員会事務局長代理)、2代目リーダー小原一貴さん(企画総務課職員)〕にオブザーバーとして山口館長が加わり、99年の12月にスタートした。
-考えるよりまず行動!-
現在の吉海町の主なイベントは、KKPの運営にまかされている。結成当初、「吉海町には今何が必要なのか。吉海町をどう変えていったら良いのか。」などをテーマに、何回も話し合った。
その結果、「楽しみのない町ではだめだ。自主的にイベントを企画して行こう。考えるよりまず行動!」と言う掛け声のもと、全員が一致団結してイベントに取り組んで行くことになった。しかし、実際に取り組んでみると、ぜひやりたいと思った企画が予算の関係で却下されたり、やっと開催にこぎつけたイベントに十分な人が集まらないことも幾度かあった。また、イベントの準備に追われ夜遅くまで作業しなければならない日もあった。このような苦労や失敗を重ねながらも、イベントを成功させるためのノウハウを徐々に蓄積してゆき、レンタサイクル用の自転車の増車、観光案内所の設置、吉海オリジナルイベントの開催など多くの観光客や町民に喜んでもらえる企画を実行に移すことができた。特に、人気の高い同町のバラ祭を年2回の開催に増やしたことは、吉海町の観光客の増加に大きく貢献している。
-バラ祭を通じて福山へ-
しまなみ海道で陸続きとなった福山市は、吉海町と同じようにバラ祭を開催している。今年の5月20日に行われた福山バラ祭には、吉海町の小学生30名が派遣された。福山青年会議所の企画に、KKPがタイアップする形で参加が実現したのだ。10年後の自分に手紙を出すというタイムカプセルの企画では、吉海町民の手紙約400通がこの一団に託された。また、会場には吉海町のブースが設けられ、小学生使節団も福山市民の前で紹介された。逆に、8月には、福山市からも海洋クラブの小中学生が吉海町にオリエンテーリングにやってきた。
最初はバラ祭だけの小さな接点しかなかったが、イベントを重ねるごとに交流の輪が確実に広がりつつある。
-瀬戸内海 対 太平洋-
高知市との交流の輪も広がっている。山口館長がまちおこしフォーラムで高知のよさこい祭りの関係者と知り合ったのがきっかけだった。今年の5月26・27日に行われた吉海バラ祭において、「瀬戸内海 対 太平洋」というテーマで、地元の「吉海小唄」と「高知よさこい」の踊り比べや「桜鯛」対「かつおのたたき」の特産品対決など住民参加型のイベントにより高知市との交流を深めた。メンバーは、「住民達が積極的にイベントに参加してくれる。意識も変わってきている。」と確かな手応えを感じている。
「小さな交流からでも始めよう!交流の輪を日本海・太平洋まで広げて行こう。」とメンバーの夢はますます大きく膨らむ。
-継続的なまちおこし-
KKPの活動が実を結び、吉海町の活性化につながっているようだ。しかし福山市、高知市との交流は、まだ始まったばかりだ。2005年に島内の高速道路が全通すれば、吉海町が単なる通過点になってしまうという懸念もある。交流の場を広げ吉海町の活性化を図って行くための課題は多い。が、「吉海町の取り組みを評価してくれる人が出てきた。メンバーの心境も変化し、達成感も感じられるようになった。だから次もがんばろうと思う。」と吉海町の美しい夕日を眺めながら、リーダーの小原さんは笑顔で語る。結成から1年半経過し、ちょうど脂が乗ってきたKKPの今後の活躍が楽しみだ。
(木内 淑雄)