99年5月1日に全通する「瀬戸内しまなみ海道」では、沿線各地で記念イベント「しまなみ海道’99」が催される。今回は、愛媛県越智郡上浦町を舞台に開催される、主なイベントを紹介する。
農業と文化の里、上浦町
上浦町は、瀬戸内海のほぼ中央に位置する大三島の東部一帯を占め、愛媛県の最北端にあって四国本土今治市へ海上24km、中国本土三原市へ海上18kmの地点にある。面積は、23.3k㎡、町の人口は、約4,100人。基幹産業は、農業で柑橘栽培がほとんどである。
同じ島内の大三島町に比べ、知名度はもうひとつであるが、架橋に向けた観光客の受け入れ準備が着々と進められている。また、最近では、昨年度の文化勲章を受賞した書道家の村上三島氏が生まれた町として、脚光を浴びている。現在は、歴史民族資料館・上浦芸術会館を拠点とした教育文化活動の推進にも力を注いでいる。
開幕セレモニーは「多々羅大橋」で
愛媛県(上浦町)と広島県(瀬戸田町)の県境をまたぐ多々羅大橋は、フランスのセーヌ川にかかるノルマンディー橋を超えて世界一の斜張橋(橋長1,480m)となる。主塔から斜めに張ったケーブルで橋げたをつるす斜張橋は、巨大なハープや鳥がはばたく姿に形容され、どこかロマンにあふれている。さすがにこの橋は世界一のスケールだけあり、優雅さに加えて雄大さを感じる。この斜張橋そのものが、魅力的な観光資源といえる。
5月1日のしまなみ海道開通日には、この多々羅大橋の橋上でオープニングイベントが開催される。瀬戸内海の雄大な自然を背景に記念演奏が始まり、関係者、来賓あいさつ、そして開幕宣言。飛び立つ鳩と特殊効果花火が空を舞うなか、イメージソングを高らかに独唱。しまなみ海道’99の開幕が華々しく飾られる。また、ブラスバンドやクラッシックカーによる「新しい海の道」の渡りぞめパレードと続く。
「多々羅リゾートパーク・しまなみ村」会場での多彩なイベント
大三島側の架橋地点である多々羅岬の付近では、しまなみ海道’99のイベント会場として「多々羅リゾートパーク・しまなみ村」会場を建設中。地元農産物を展示販売する特産品センター「多々羅夢岬」のほか、観光情報を提供するインフォメーションセンター、レストランなどが整備されつつあり、思いきり遊んでくつろげる海のリゾートパークとして期待される。この会場では、しまなみ海道-大花見、しまなみ海道-美食市、などたくさんのイベントが計画されている。
また、多々羅総合公園の戸板海岸では、99年7月下旬の日曜日に、「サマーフェスティバル in かみうら’99」が開催される。立て干し網、シーカヤック大会、花火大会、歌謡ショーなどが行われ、自然資源である『海』を活かした夏のイベントが、家族全員で楽しめる。
コアイベント-村上三島特別書道展
上浦芸術会館(村上三島記念館)は、上浦町出身の書道家・村上三島氏をはじめ、日本を代表する書道家たちの作品約3,500点を収蔵。書作品の収蔵規模は国内一を誇る。その中でも、村上三島氏による書の大作が、91mの書展示壁面にズラリと並ぶ。力強く、美しく、優しく、厳しく・・・・その自在な書体と迫力は圧巻!珠玉のような作品のかずかずが、見る人を感動させる。
記念イベントとして99年の開幕後から7月31日(土)までの約3カ月間、上浦芸術会館では、村上三島氏による五書体の作品を特別展として大規模に展示する。記念セレモニーや村上三島氏の講演会等も予定されており、大変な反響となるであろう。
魅力ある美術鑑賞ルート
今回、村上氏と同時に、瀬戸田町(生口島)出身の日本画家、平山郁夫氏も文化勲章を受章した。瀬戸田町の「平山郁夫美術館」と書の殿堂である「村上三島記念館」を巡るコースは、魅力的である。両町をつなぐ多々羅大橋を車で通ってもよいが、この海道の特色を生かし自転車(レンタサイクル)あるいは徒歩で渡ってそれぞれの芸術を堪能するのもいいだろう。開通記念イベントが終わっても、観光客を集めることのできるルートとして大いに期待される。
(桐嶋 正彦)