尾道市は瀬戸内海のほぼ中央に位置しており、尾道水道に面した開港8百有余年を誇る港まちである。また坂のまち、映画のまちとしても有名であり、昔から多くの文人墨客が訪れ文学のこみち等その足跡・名残りを大切にしているまちでもある。
99年5月の瀬戸内しまなみ海道開通に伴い、尾道はしまなみ・四国への玄関口としてその立場がクローズアップされ、「歴史と文化が香る瀬戸内の十字路」ともいえる新たな尾道の顔づくり、魅力づくりも進んでいる。
交流拠点尾道の新しい街並とともに今後のしまなみイベントを紹介したい。
しまなみ交流館(テアトロシェルネ)
尾道を訪れるとJR尾道駅前の一変した街並が目を引く。尾道駅前地区市街地再開発事業等により99年3月迄に完成した新たな建物群である。海に開けた一体的な景観は南仏風であり明るいイメージの「ベルポール」(美しい港の意)に相応しい景観が出来上がっている。
その新たな街の中心施設が、尾道の新たな交流拠点・情報拠点といえる「しまなみ交流館」(愛称・テアトロシェルネ)である。白い貝をイメージした造りの建物であり、しまなみ開通に合わせてオープンした。690席のホールとともに1階には観光情報コーナー及び展示コーナーがある。展示コーナーは、しまなみイベント開催期間中(99年10月迄)には「イベント情報コーナー」が設けられ様々なパネル展示や観光案内所等があり、しまなみ関連の情報収集拠点として既に多くの人々に利用されている。
また、海沿いにはしまなみイベントの拠点会場があり、「尾道フィッシャーマンズワーフ」や「広島館」といった施設が目白押しである。開通直後の5月には約28万人の集客があった。
瀬戸内しまなみ大学
しまなみ交流館の観光情報コーナーでは、「瀬戸内しまなみ大学」の入学手続き(学生証の発行)も行っている。この大学は、しまなみ周辺地域20市町村の繋がりを活かしこの地域独自の歴史や文化、風土を体験しながら学ぼうというもので32講座用意されている。学長は瀬戸田町出身の日本画家平山郁夫氏。このうち尾道では「尾道演劇祭」や大林宣彦監督の映画「あの、夏の日」のロケ地巡りなど5講座あり順次開催されている。
しまなみ地域における連携のモデルとして継続とともにさらなる内容の充実を期待したい。
瀬戸内しまなみ大学尾道開催講座
講座名 | 開催日時 | 開催場所 |
---|---|---|
尾道演劇祭 | 6/12~7/25 | しまなみ交流館 |
しまなみ映画上映会・映画講座 | 6/6、8/15、9/11 | しまなみ交流館 |
ロケ地めぐり、「あの、夏の日」 | 8月下旬の日曜日 | 尾道市内一円 |
橋の体験セミナー | 8/4「橋の日」 | 橋の見学等 |
文学フェア | 秋 | 文学の館等 |
住吉花火祭り
住吉神社は住吉浜の海産物問屋の旦那衆が崇敬していた神社であり、「住吉花火祭り」は商売繁盛を願って江戸時代後半にはじまり今では尾道の夏の風物詩となっている。
多くの遊覧船が浮かぶなかを提灯船や御座船、火船が往き来する様は「西の両国花火」と称された時期もあった。
趣向を凝らした華麗な色使いに定評があり、勇壮なスターマインや華麗な水中花火等約1万発の花火が、7月31日(土)にしまなみ開通を記念し盛大に尾道水道を彩る予定である。
おのみち文学の館
大林監督の映画ロケ地巡りと並ぶ尾道らしい魅力づくりとして「おのみち文学の館」が99年3月にオープンしている。
千光寺公園中腹に「おのみち文学の館」を新たに設け林芙美子の使用していた愛用の品々や作品等を展示している記念室や尾道縁の文人・歌人の資料等を展示している。この建物の坂上にある中村憲吉終焉の家及び坂下の志賀直哉旧居とともに一体的に活用し、見晴らしのいい景色とともに坂のまち・文学のまち尾道を実感できる観光スポットといえる。
瀬戸内の十字路として
歴史・文化に彩られた尾道にも新しい「顔」の誕生とともに尾道ラーメンや新鮮な魚介類、乾物等様々な食の魅力も多い。
尾道らしさともいえる多様な魅力の高まりとともに、「瀬戸内の十字路」ともいえる東西南北の様々な交流・連携の橋渡し役として、今後さらに注目を集めるまちといえる。
(村上 茂樹)