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くろーずあっぷ東予

上浦町 瀬戸内しまなみ海道のエントランス(98年5月)

1998.05.01 くろーずあっぷ東予

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kamiuramap 上浦町は、瀬戸内海のほぼ中央に位置する大三島の東部一帯を占める。愛媛県の最北端にあって四国本土の今治市へ海上24km、中国地方の三原市へ海上18kmの地点にあり、美しい自然と多彩な史跡に恵まれている。基幹産業は農業で、柑橘栽培がほとんどである。人口は約4千人。
 瀬戸内しまなみ海道の沿線にあり平成11年春の完成を目指して多々羅大橋が建設されている。この大橋が完成すれば、上浦町は広島側から愛媛に入る際のエントランスゾーンとして、陸上交通の要衝になると予想される。町ではこの立地環境を生かそうと知恵を絞っているところであり、その動向が注目される。

優れた自然環境と水軍ゆかりの史跡

 上浦町は瀬戸内海国立公園のほぼ中央に位置することから、おだやかに横たわる瀬戸の海を高台から眺めると、ぽっかり浮かぶ大小の島々が、思わず歓声のあがるような美しい風景をくり広げている。
 なかでも多々羅大橋の架かる多々羅地区から広島県生口島などを眺める景観は素晴らしく、多々羅大橋も世界最大の斜張橋となる技術に支えられ、美しい造形美を醸し出すことになる。
 上浦町はまた、広島県と愛媛県の水軍ゆかりの地を結ぶ「水軍観光ルート」の重要拠点のひとつで、日本最古の水軍城・甘崎城跡のほか、貴重な水軍遺跡が数多く眠っている。多々羅岬からは、その甘崎城跡を眺めることもできる。

 甘崎城は、663年に築城された日本最古の水軍城跡。慶長年間(1596~1615年)には、今治城主藤堂高虎の弟大学頭が居城していた。

 こうした豊かな自然や史跡を求めて本町を訪れる観光客は、平成5年の25万人から8年には26万人へと増加傾向にある。さらに来年の春の瀬戸内しまなみ海道の全通で観光客は大幅に増えることが予想され、町では美しい自然景観と好転する地理的条件、水軍ゆかりの史跡、文化財や豊富な海の幸、新鮮な果物等を活用した滞在型海洋リゾート地づくりを目指している。

 

多々羅地区の開発

 開発は、多々羅大橋たもとの多々羅地区に集中することになる。
 多々羅地区には、多々羅総合公園があり瀬戸内海新時代の中心的な役割を果たすべく、自然環境を生かした文化・歴史等を体験し、幅広い人々の交流と国際交流の促進を目的として整備されている。この多々羅総合公園には、大三島の歴史と文化を紹介する3つの文化施設がある。

(1) 上浦芸術会館(書の世界 村上三島記念館)

上浦町出身で、日本を代表する書道家である村上三島氏の書作品をはじめ、日本を代表する書道家の作品約3000点が収蔵、展示してある。会館は展示壁面91mの大展示室や、移動椅子600席を備えた大ホールなどを持つ本格的なもので、ここに展示された作品の数々は、見る人を感銘深くさせる。また、村上三島氏の収集した中国の宋や明、清代の名墨、名硯、古書などの貴重な書道関係資料や、青山杉雨、西川寧、安東聖空、日比野五鳳、桑田笹舟といった日本を代表する書道家の名作も展示されている。
 この芸術会館だけでも十分に一見の価値があるものであるが、さらに生口島の「平山郁夫美術館」、大三島町の「町立大三島美術館」、今治市「河野美術館」、玉川町「近代美術館」、松山市の「県立中核美術館」(建設中)「子規記念博物館」などと海道の美術館巡りの「通し券」によるルート化をすれば、集客力はますますアップしていくものと思われる。

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▲ 芸術会館

 

(2) 上浦町歴史民俗資料館

  上浦町歴史民俗資料館は芸術会館の隣にある。村上水軍関係の資料や、日本最古の水軍城・甘崎城を復元した城郭図など、貴重な文化財や民俗資料が展示してある。
 資料館を見学後に、甘崎城跡を眺めれば、今は昔の歴史への想いが重なることになる。

(3) 上浦ふるさとの家

 新しく平成4年に建てられた。懐かしいたたずまいの民家となっており、ここでは、昔、島で使われていた農耕具や民具を見ることが出来る。その他、公園内には国際交流村も整備されており、海水浴場、キャンプ場、テニスコートにより、思いのままに時間を過ごすことができるようになっている。

▲ ふるさとの家

▲ ふるさとの家

 

多々羅温泉

 また、多々羅総合公園の近くには、越智島しょ部で唯一の温泉施設「多々羅温泉」がある。この多々羅温泉はふるさと創生資金を活用してその温泉源泉が掘削された。
 ふるさと創生資金は、昭和63年に竹下首相のもと、全国の市町村に一律1億円が交付され、使い道は各市町村の自由とされた。各市町村が知恵を絞って地域活性化に役立てるよう期待されたものであるが、それだけに資金使途については、当時は随分と注目された。
 上浦町では、温泉掘削を試みた。
 島しょ部に共通して顕著に見られることであるが、上浦町でも人口流出や産業活力の低下に悩んでおり、この打開に向けて、敢えて温泉開発に挑んだ。その結果が掘削に成功し、島しょ部では珍しい多々羅温泉に結びついている。温泉は地下1000mから沸き出ており、泉質はラドン塩化物鉱泉。神経痛や消化器病、疲労回復などに効果がある。温泉施設はモダンな和風建築となっており、浴室には石と檜がふんだんに使われている。サウナやトレーニング室も備えている。

▲ 多々羅温泉

▲ 多々羅温泉

 

 以上は、既に整備されているものであるが、これらに加えて多々羅総合公園の一角に多々羅しまなみ公園が目下整備されつつある。これは、多々羅地域が瀬戸内しまなみ海道ルートのほぼ中間点に位置することから、「道の駅」として休憩・情報交流機能や物販・飲食提供施設を構えていくもので、特産品センター(仮称)、農産物直販施設(ふれあい屋台市)、さわやかトイレ、水軍広場等が整備される。
 そのうち特産品センター(仮称)は上浦や越智島しょ部の物産を紹介し、情報発信を目指すもので、来春頃に本格的にオープンする予定である。瀬戸内しまなみ海道でこうした物産販売拠点づくりが具体化しているのは、ここだけであり、このことからも上浦町の橋に掛ける意気込みの大きさが伺えよう。
 このほかにも町内はサイクリングロードとしても景観に優れており、すでに大三島島内にはサイクリング道が20km整備されている。
 多々羅大橋にもサイクリング道が架けられることになっており、サイクリング拠点としての発展可能性も秘めている。

 さらに多々羅地区では、今後、シーフードレストラン、ケビン、オートキャンプ場、サイクル公園などを計画している。また、甘崎城の周辺を「水軍の里」として復元させ、歴史民俗資料館に次ぐ第二の文化拠点とする構想もたてられている。

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完成記念イベントでは多々羅がメイン会場の一つ

 瀬戸内しまなみ海道完成を記念して「瀬戸内海大橋完成記念イベント しまなみ海道’99」が開催される。このイベントは愛媛県と広島県にまたがって連続的に展開されていく「広域連携方式」に特徴があり、両県の関連市町村が開催場所となっている。
 多々羅地区は、来島大橋の架かる今治市の糸山や今治港、吉海町の下田水地区とともにこの一連のイベントで主会場となる。多くのイベントが予定されており、大いなる盛り上がりが期待される。

 

【多々羅会場でのイベント予定】

会 場上浦町「多々羅公しまなみ公園」周辺
内 容野外ステージなどのアミューズメント施設や飲食物販施設、イベントに関する情報を提供する案内所などを設置する。
大型駐車場を確保し、中心的な集客拠点として整備される予定。

(梶原 正秀)

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