-花を愛で、緑に浸り、自然と対話する“ジャパンフローラ2000”-
見のがせない!20世紀をしめくくる大イベント
国内では、20世紀最後の大規模博覧会となる「淡路花博“ジャパンフローラ2000”」。この記念すべき大イベントを体験すべく、松山から高速バスを乗り継ぎ約5時間半、(途中、徳島ラーメンなど賞味しつつ)一路淡路島へと向かった。
一日約4~5万人が訪れるという会場はこの日、平日にもかかわらず団体客や家族連れで大にぎわい。休日の混雑たるやいかばかりかと、想像するだけでめまいがしそうだ。ちなみにこの前日の日曜(5月21日)には79,000人余りが訪れ、累計で300万人を突破した。
にぎわいゾーンでお祭り気分
約96ha(東京ドーム約20個分!)にわたる会場は、「にぎわいゾーン」「フローラゾーン」「夢舞台ゾーン」の3ゾーンに大きく分かれている。
メインゲートをくぐったところが「にぎわいゾーン」。世界最大級の花として話題のラフレシアが展示されている「緑と都市の館」などのパビリオンや、アジアの味覚やショッピングが楽しめる「アジアショーケース」などが並ぶ。
パビリオン入口には長蛇の列ができ、「1時間待ち」というところもある。夕方5時頃に再チャレンジすると、待ち時間なしで入れた。時間に余裕があるなら、パビリオンは後回しにしたほうが得策かもしれない。
この日は阿波踊りのパフォーマンスに出くわしたが、その日その日でいろいろなイベントが開催されているようで、お祭り気分を盛り上げてくれる。
庭づくりのアイディアいっぱいフローラゾーン
人波をぬって「フローラゾーン」にたどり着く。花と緑があふれるこのゾーンの中でも、最大の見どころは「国際庭園」。世界23カ国と日本国内の22府・県・市が、それぞれの地域性や自然を盛り込んだ庭園を出展している。西オーストラリア州のバオバブの木や、クロアチアの石灰岩石の庭など、特異な自然景観を模した庭を楽しめる。
印象的な色の取り合わせ方をした花壇、竹や流木の効果的な使い方などなど、園芸好きの方には、庭づくりの参考になるアイディアがいっぱいなのでは。
花の中に据えられたベンチに座ってみる人、三脚を立てて写真を撮る人、スケッチブックを広げる人、楽しみ方はさまざまだ。
エコロジカルな技術を活かす夢舞台ゾーン
会場の南西部「夢舞台ゾーン」には、国際会議場、ホテル、レストラン、野外劇場などの施設群が立ち並び、人が集い交流する場と位置づけられている。階段状に並んだ100区画の花壇をキク科の植物が彩る「百段苑」や、「夢舞台温室」などのみどころが、迷路のような回廊で結ばれている。「この先にいったい何があるのだろう」と思わせる造りが妙にワクワク感を持たせてくれる。
夢舞台の背後には、12haにわたる緑の斜面が広がっている。この花博の会場になっている国営明石海峡公園は、関西空港などの造成のために使われた土取り場跡地につくられた。岩盤がむき出しになった傾斜地に、最新の緑化技術を駆使して、6年間で緑を取り戻した。斜面の土が流れ落ちないように、鉄筋を蜂の巣状に埋め込み、地中に埋められた点滴灌水ホースによって、乾燥を防いでいる。なお、灌水には雨水が利用されている。トイレには再生処理水が使われるなど、降水量の少ない島ならではの工夫があるのだ。
斜面に植樹された約25万本の木は、周辺の山に従来から生えていたウバメガシやヤマモモが中心になっている。将来的には灌水の必要もなくなり、淡路の自然の森の姿にかえることが期待される。
まだまだある環境保全への取り組み
98年の長野オリンピックや、現在問題になっている愛知万博など、大規模イベントにおける環境問題への取り組みは、近年、一つのトレンドとなっている。淡路花博は「人と自然のコミュニケーション」がテーマであり、前述の緑化への取り組みのみならず、環境共生型の会場整備が心がけられている。その一つとして、会場内のレストラン等から出る調理残さ、食べ残しといった生ごみは、会場の一角に設置されたプラントで堆肥化されている。一日に300~400kgの生ごみが処理される。
できあがった堆肥は当初、会場の花壇等に撒かれる予定であった。しかし、来場者へ無料で配ったところ好評で、午前中にはなくなってしまうということだ。会場には家庭用の電動生ごみ処理機も展示してあり、興味深そうに立ち止まる人も多い。特に家庭菜園や園芸を楽しむ家庭では利用価値が高い。元気な花を咲かせたい、という気持ちが生ごみ減量化につながれば、一石二鳥である。
他にも、一部の照明等に太陽光発電を利用したり、会場内を回遊するトラム「ユメハッチ号」の動力源にクリーンなプロパンガスを用いたりと、目立たないところにも、細やかな配慮がなされている。
スタッフの努力が花開く
夕方、国際庭園の一角にある庭で、スタッフの方が入念に水遣りをしていた。この庭は苔に覆われているため、他が1日に1回のところ、ここだけは2回の水遣りが必要なのだそうだ。夏場にはあと1~2回増やさないといけないだろう、とのこと。別の場所では咲き終わった花がらを摘んだり、枯れた枝を切ったりするスタッフの姿が。大勢の方々の入念な手入れがあってこそ、こんなにきれいな花が見られるのだなと、改めて実感。
こういった会場の清掃や案内など、運営には数多くのボランティアも関わっている。募集に際しては、定員を上回る応募があったという。
会場内では、車椅子の方もちらほら目にした。段差を極力少なくして、高齢者や障害者、小さな子供連れでも回りやすい、「バリアフリー」な会場づくりのたまものであろう。これからの大規模イベントの運営に欠かせない要素を3つのキーワードで挙げるなら、「環境保全」「ボランティア」「バリアフリー」ということになるのではないだろうか。
9月3日までは夜も楽しめます
さて、この7月1日から9月3日までの期間は、開催時間が午後9時30分まで延長され、夜の公園散策が楽しめるようになる。光のオブジェや、週末には花火の打ち上げも予定されている。「ナイト・ピクニック」を楽しんでもらおうと、シートやランタンの貸し出しもある。昼間とはまた違った趣が味わえそうだ。
ますます楽しみ方の幅が広がる淡路花博。今回は、とにかく広い会場を細大もらさず見てやろうと欲ばって歩き回ったため、かなり体力を消耗した。これから夏場は植物だけでなく、人もじゅうぶん水分を補給して、無理のない計画を立て、ゆったり花と緑に浸ってみていただきたいと思う。
(上甲 いづみ)
開催概要
名称 | 国際園芸・造園博「ジャパンフローラ2000」 |
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テーマ | 人と自然のコミュニケーション |
会期 | 2000年3月18日~9月17日(184日間) |
開催時間 | 午前9時30分~午後6時(7月1日~9月3日は午後9時30分まで) |
主会場 | 国営明石海峡公園(淡路地区)と淡路夢舞台ほか96ha (兵庫県・淡路島) |
開催主体 | 国際園芸・造園博「ジャパンフローラ2000日本委員会」 財団法人 夢の架け橋記念事業協会 |
入場料金 | 当日券: 大人2,900円 シルバー2,000円 高校生1,500円 小・中学生800円 幼児400円 (その他各種割引入場券あり) |
想定来場者数 | 500万人 |