7つのゾーン、4つの広場、5つの道
干拓地を利用した38haもの敷地は7つのゾーンに分かれている。「アミューズメント ゾーン」に向かい、大人気の観覧車から美しい会場を見渡してみる。玄関口で配布されたガイドマップには、会場には7つのゾーンと4つの広場を5つの道が結 ぶとあるが、その様子が手にとるようにわかる。「ラグーンゾーン」の人工海浜「月の海」の美しさが際立っており、その上をゴンドラ「きらゴン」が楽しそう に行き交う。浜辺に着くと、博覧会場なのにまるでリゾートにいるようだ。
ここで博覧会内では世界初となるトライアスロン・ワールドカップが8月 12日に行われた。玄関口「ゲートゾーン」では、山口きららバンドが出迎えてくれる。多くのパビリオンが立ち並ぶ「街のゾーン」では国際色豊かな買い物や グルメも楽しめるとあり、思わず立ち寄りたくなる仕掛けである。「スポーツゾーン」では連日イベントが繰り広げられている。
広い会場であるが、外周を「きららバス」が定時的に巡回、干拓地のケタ外れの広さを実感しながらお目当てのゾーンへ楽に移動できる。会場内の美しい景色を眺めながら移動するには、子供達にも大人気の「きららトレイン」(電気自動車)がおすすめだ。
「やまぐちゾーン」の「市町村館」は県内56市町村を8つの地域に分けて紹介してくれる。観光資源の多い山口だが、定番スポット以外にも新しい魅力を発見することで翌日の観光地めぐりを充実させる人も多いに違いない。
同ゾーンの「いきいき・エコパーク」ではいろんなエコライフの提案がなされており、「やまぐち近未来住宅」と合わせて自然環境との共存・調和をわかりやすく学ぶことができる。
一番の呼び物は「やまぐち元気伝説」
「テーマゾーン(スーパーテーマ館)」では、山本寛斎氏プロデュースによる「やまぐち元 気伝説」が1日2回開演されている。150人の出演者の歌や踊りと音と光が織りなすパワフルなライブショーは約1時間に及び、会場はその熱気にあふれてい る。フィナーレを飾る地元山口のダンサー達に対しては一際大きな拍手が沸き起こる。この博覧会に懸ける人々の想いと「やまぐちの元気」が爆発している。さ すがに一番の呼び物だけのことはある。
もう一つの大きな呼び物は海場エリア12千m2を使い夜間に行われる大型イベント「きららスターライトファンタジー」だ。演出には98年ワールドカップの開会・閉会式を手がけたイヴ・ペパン氏が起用され、色・音・光・水を自在に操り、華やかで幻想的な世界が目の前に繰り広げられる。
将来は一帯がスポーツ・自然公園に
会場となる「きらら浜」は、元々1947年から1965年まで国営干拓事業として整備さ れたものであり、総面積は286haにも及ぶ。松山空港が2つスッポリ入る広さだ。その後農地として使用されることもなくそのまま放置されていたため、山 口県が国から購入したものである。
南北に分けられた工区のうち、きらら博が開催されているのはその南側の一部だ。北側のうち30haには身近に 自然を観察し、ふれあい、親しむための「山口県きらら浜自然観察公園」が先行して整備されている。南側は博覧会でその施設の一部を先に利用しているが、県 民の多様なスポーツ活動や幅広い交流の場として自然共生型の運動公園「山口県スポーツ交流ゾーン」として整備される予定だ。9月30日のきらら博閉幕後に 拡充し、来年4月に新しくお目見えする。
このように単にお祭り騒ぎではなく、跡地の利用もしっかりデザインされている。
キーワードは「元気」
山口きらら博では、パビリオン中心に珍しい展示物やショーを見せるといった従来の博覧会 とはやや違った試みがなされている。その一つがテーマ設定である。従来の博覧会は未来を示す難解なイベントがある一方、やたらと学習的で固い内容、あるい はその横で子供向けのショーなどがあるなどごちゃ混ぜとなりがちだ。しかし、きらら博では親しみやすいものとし、県民参加を促すため、「元気」をキーワー ドとし、参加計画のコンセプトを「元気人間登場」とした。
広く県民参加を促す
山口きらら博は、そこに展示、紹介される先進技術よりも地域の明日に懸ける姿を前面に出 し、県民参加を最も重要な柱と位置付けている。ここで主体的な役割を担っているのが99年11月に設立されたボランティア組織「きららネット」である。き ららネットには、博覧会という一大イベントを自分達で成功させ、博覧会後も「21世紀のやまぐちをつくっていこう!」という元気人間達が集い、活動してい る。
この博覧会には県内各市町村持ち回りの「市町村の日」に参加する1万8千人、催事制作や展示制作への参加1万4千人、これに運営ボランティア6千人を加え、合計約3万8千人の県民が支えている。
未来志向と手作り志向とのバランス
折しも今年は北九州市、福島県、そして山口県と3つもの大型博覧会が重なっている。
博覧会ではそれぞれ理念・テーマを掲げるが、単なる一過性のお祭り騒ぎという批判も多く、博覧会は曲がり角にきているともいわれている。しかしながら、こ の「山口きらら博」は公園的な会場のつくりや明確なテーマ設定、住民参加といった従来の博覧会とは違った新しい傾向を感じさせるものがある。
この山口きらら博は9月30日まで開催されている。是非御覧頂きたい。
(林 文彦)
開催概要
名称 | 21世紀未来博覧会 |
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愛称 | 山口きらら博 |
開催テーマ | いのち燦めく未来へ |
開催期間 | 2001年7月14日(土)~9月30日(日) |
主催 | 21世紀未来博覧会協会 |
開催時間 | 午前9時30分~午後9時 |
会場 | 山口県阿知須町 きらら浜 |
面積 | 会場約38ha 駐車場約25ha |
目標入場者数 | 200万人以上 |