愛媛県南西部に位置する宇和島市は、伊達家10万石の城下町、豊後水道に面した海上交通の要衝として発展してきた。そして、現在は人口約6万5千人、陸上交通(道路、鉄道)、海上交通の結節点としての機能を持ち、南予地域の政治・経済・文化の中心都市である。
今、宇和島市では、JR駅ビルの新築や、国・地方自治体などによる積極的なインフラ整備が進められており、市中心部は大きく様変わりしている。そのいくつかを紹介しよう。
新しい駅ビルが誕生
JR宇和島駅は予讃線、予土線の終着駅であり、1日平均約4千3百人の乗降客がある。宇和島-松山間は1日16往復の特急列車が運転されており、所要時間は1時間20分である。
4月2日、新しいJR宇和島駅がオープンした。当駅はJR徳島駅に次ぐ、四国で2番目の複合型駅ビルである。駅ビルは、鉄筋コンクリート6階建て、延べ床面積4,248㎡(うち駅部分は1,244㎡)、外壁が淡いピンク(真珠色)で屋根には一部洋風瓦を使用しており、スペイン風の明るいイメージが漂う。駅ビル内のホテルは6月開業の予定である。
この新駅ビルは、駅周辺再開発計画に対応して95年にJR四国が建築構想を発表し、97年に着工された。宇和島駅舎は鉄道開業当初から数えて7代目となる。
駅前広場も整備
駅ビル新築と同時に、駅前広場の整備も行われた。施工面積は約4,900㎡で、今年3月に完成した。バス乗り場にはシェルター(雨風避け)が設置され、乗降客には便利になった。また、モニュメントや花壇、ベンチなどのある「憩いの広場」も設けられた。この他、広場には駅前通りと同じようにワシントンヤシなどが植えられ、南国のイメージが漂う。新駅ビルの完成と駅前広場の整備とで、宇和島の玄関口は新しく生まれ変わった。
柿原バイパス完成
国道320号線は、高知県宿毛市から宇和島市を経由して日吉村に至る幹線道路である。87年にJR宇和島駅から柿原までのバイパス工事が着工され、今年3月に全線開通した。バイパスの延長は2.8kmで、そのうち2kmはトンネルである。このバイパスの完成で、道幅が狭かった柿原・伊吹町あたりの渋滞が解消されるとともに、国道320号線での市内中心部へのアクセスが向上した。
A: 国道320号線柿原バイパス
B: JR宇和島駅ビル
C: 新内港埋め立て地
宇和島道路の延伸と新内港の埋め立て
国道56号バイパス(宇和島道路)は全長6.2kmであり、93年に高串-朝日町間(2.2km)が併用開始していたが、今年3月に坂下津-保田間(2.7km)も開通した。これで、未開通区間は朝日町-坂下津間(1.3km)のみとなった。
また、同バイパスが通る新内港では、県や市の土地開発公社によって埋め立て工事が行われた。この埋め立て地は、埠頭、緑地、国道、都市開発(民間企業・団体)などに利用される予定である。宇和島市の海の玄関口も一新する。
宇和島市では、これら以外にも、総合体育館や浄化センターなどの施設が次々とオープンしている。また、JR駅周辺では再開発構想もあり、現在、商工会議所などで検討されている。
人口減少の続く宇和島市であるが、地方拠点都市地域に指定されており、今後もその中心都市としての機能を十分に果たしていくことが望まれる。現在行われているインフラ整備は、市中心部と周辺町村とのアクセス向上や、中心都市としてのさらなる魅力度アップにつながるだろう。
(畠岡 宏一)