99年春に開通する「瀬戸内しまなみ海道」では、開通から約半年間、沿線各地で記念イベント「しまなみ海道’99」が催される。今回はGWを飾る前半のメインイベント、99年4月28日(水)~5月5日(水)に開催される「国際オーキッドウェーブ in しまなみ」と、主な開催地である広島県御調郡向島町を紹介しよう。
洋ランの里、向島町
美しい花形や香りを鑑賞するという点では、洋ランほど珍重される植物は他にない。戦前の日本では主に上流階級の趣味として栽培されていたが、現在はどの花屋でも洋ランが店頭に置かれ、東京や大阪などの大都市では毎年大規模な「らん展」が開催される。
向島町は「洋ランの里」として知られている。約30の生産者が年間に切花約6万本、鉢物約11万本の洋ランを出荷し、瀬戸内有数の一大産地を形成している。95年11月には、瀬戸内海眺望の名所としても知られる同町高見山の麓に、苗の中間育成などをする温室10棟、バイオ棟、展示棟、広場などを備えた「向島洋らんセンター」が誕生した。当初の入場者目標約3万人に対し、オープン後1年間で約7万人の入場者を記録した。97年度も約4万人が訪れた人気施設である。
国際的かつアカデミックな「らん展」
「国際オーキッドウェーブinしまなみ」の会場となるのが、この「向島洋らんセンター」と隣の因島市の「広島県立因島フラワーセンター」である。「広島県立因島フラワーセンター」では初心者・ファミリー層向けの幅広い花卉の展示・販売が行われるのに対し、「向島洋らんセンター」では世界各国の植物園などが出展する国際的かつアカデミックな「らん展」が企画されている。
向島町関連の主なイベントの目標入場者数
イベント名 | 目標入場者数 | 開催期間 |
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国際オーキッドウェーブinしまなみ | 向島町 10万人 | 4/28~5/5 |
因島市 20万人 | ||
向島レトロタウン | 20万人 (通勤客を除く) | 全期間 |
マリン・ユース・フェスティバル | 1万人 | 8月中旬 |
合計(向島町分のみ) | 31万人 |
資料:広島県しまなみ海道’99イベント協会
世界の有名植物園が原種を出展
洋ランは品種改良が盛んに進められており、新しい交配種が次々に生まれている。都市部の大消費地で開催される「らん展」は、ほぼすべてが商業ベースであり、品種改良による鑑賞用植物としての完成度の高さが競われる。
国際オーキッドウェーブinしまなみ」の特色は、まず洋ランの生産地で開催される大規模な「らん展」であること、そして、原種・希少種に注目した国際的な「らん展」であることだ。いずれも日本初の試みであり、しかも国内最大級の規模である。
19世紀のヨーロッパでは、熱帯地方に広く分布するランの原種を求めて、多くの収集家が危険な旅行を企て、原産地からまったく姿を消した種も続出したと言われている。数多くの原種・希少種を栽培しているキュー王立植物園(イギリス)、ボゴール植物園(インドネシア)、シンガポール植物園などの出展は、愛好家だけでなく、幅広い入場者の注目を集めそうだ。
観光を町の基盤とする千載一隅のチャンス
向島町の97年の観光客数は約39万人である。これに対し、99年に向島町を舞台として開催される主要な記念イベントの目標入場者数だけでも、合計で約31万人に達する。開催期間が限られることを考えれば、向島町はかつてないボリュームの観光客を受け入れることになる。
もとより年間約248万人の観光客を集める尾道市から渡船で5分もかからず、同じく約103万人を集める瀬戸田町へも自動車で約20分の好立地である。記念イベントを息の長い観光振興に結び付け、21世紀の成長産業と目される観光産業を地域の経済基盤として取り込むことが出来るかどうかは、駐車場不足などへの準備を含めたイベント客への対応いかんにかかっていよう。
「全島公園化構想」を掲げる向島町が、「瀬戸内しまなみ海道」開通をバネに、大きく飛躍することを期待したい。
しまなみ海道’99世界らん展
「国際オーキッドウェーブinしまなみ」の概要
主 催 | 広島県しまなみ海道’99イベント協会 |
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日 時 | ①開会式・内覧会 1999年4月28日 15時30分~17時 ②一般公開 1999年4月29日~5月5日 10時~18時 |
会 場 | 向島洋らんセンター 広島県立因島フラワーセンター |
入場料 (予定) | 当日券1,200円(大人)、800円(小・中学生) 前売券1,000円(大人)、600円(小・中学生) ※ 6歳未満無料 |
参加植物園等(予定) | |
キングスバーグ植物園(オーストラリア) タスマニア王立植物園(オーストラリア) 四川省植物園(中華人民共和国) ボゴール植物園(インドネシア) マダガスカル植物園(マダガスカル) キナバル山国立公園(マレーシア) ベナン植物園(マレーシア) ニュージーランド植物園(ニュージーランド) クラクフ農業大学(ポーランド) モスクワ州立教育大学(ロシア) シンガポール植物園(シンガポール) 台湾大学実験林(台湾) キュー王立植物園(イギリス) ホノルル植物園(アメリカ) マリーシェルビー植物園(アメリカ) 広島市植物公園(日本) | |
以上13カ国・地域、16施設 |
なお、併催される「しまなみ海道’99国際蘭会議」の日時は4月29日、会場は尾道市のグリーンヒルホテルが予定されている。
(鈴木 俊夫)