1999年5月1日、「瀬戸内しまなみ海道」ついに開通!
開通から約半年間、沿線各地で記念イベント「しまなみ海道’99」が催される。今回は、99年5月16日(日)~5月23日(日)に開催される「世界ばら展」と、その開催地である愛媛県越智郡吉海町を紹介しよう。
「吉海物産市場いきいき館」がお出迎え
今治から「しまなみ海道」に乗り、最初に到着する島が吉海町のある大島である。吉海町は、みかんと漁業に生きる人口約5,000人の町である。また、吉海町の海の玄関口である下田水港(しただみこう)には、「しまなみ海道’99」の来島拠点会場(今治港、糸山、下田水)の一角、瀬戸内市場(下田水会場)が開設されており、大島側の拠点として注目されている。ここには、地域特産の農海産物の直売所やレストラン、観光案内等の機能を兼備えた新しい施設「吉海物産市場いきいき館」がある。シーフードバーベキューの味を楽しみながら、休憩もできるというとても楽しみなスポットである。
「世界ばら展」に全員集合!
「バラが咲いた~ バラが咲いた~・・・」と思わず歌を口ずさんでしまうのが、世界のバラ160種類、4,600株を集めた吉海町バラ公園である。1993年3月に開園したこの公園で、毎年5月末頃開催されている「バラ祭り」は、年々盛況になっている。口コミによる人気で、昨年は実に2万人のお客さんが訪れた。今や押しも押されぬ吉海を代表する名物行事となっている。
さらに今年は、「しまなみ海道」の開通を記念してグレードアップ、「世界バラ展」(5月16日~23日)として開催されることとなった。あのオードリー・ヘップバーンがこよなく愛したフランスのライ・レ・ローズ市(ヨーロッパで初めてバラ園ができた都市)のバラ園のバラコレクション100種400本を移植した「ライ・レ・ローズのバラ展」や、「しまなみ海道」開通記念に開発した新種のバラの発表とネーミングの募集など、バラの愛好者や花好きの人には必見のイベントが盛りだくさんである。
また、吉海町バラ公園内には、バラのポプリやじゃこてんなどの実演販売店やレストランのある「ローズ館」が、さらにバラ公園の隣には、郷土が生んだ野間仁根(のまひとね)画伯の絵画をメインに多数の美術品や民具等を展示した吉海町立郷土文化センター(入館料:一般200円)がありこの機会に立ち寄ってみたいところである。
絶景かな亀老山(きろうさん)展望公園
亀老山展望公園は、吉海町が誇る絶景ポイント。亀老山は標高300mを超える山だけに、眼下の瀬戸内海の景色を一望できる。かってこの来島海峡の美しさを「戻り来て 瀬戸の夏海絵の如し」と詠んだ俳人の高浜虚子のこころがよく分かるような気がする。
武志島、中渡島、馬島などが造り出す瀬戸の多島美、来島海峡の複雑な潮の流れ、約9年の工期をかけて造られた世界初の三連吊橋・来島大橋、来島海峡を航行する船の軌跡など、眼前には自然の造形美とその景観を生かした吊橋の連続が調和し、さらに一体化した大パノラマが広がっている。来島海峡の美しさが丸ごと伝わり、贅沢な気分にさせられるのは、ここ亀老山展望公園をおいて他にない。それほどここからの景色は圧巻である。
また数々のデザイン賞を受賞したこの展望台は、環境に配慮した斬新な建物で白い石の階段がとても印象的である。
今も続く善根宿(ぜんこんやど)・お接待の習慣
大島(吉海町と宮窪町)の春の風物詩は、なんと言っても190年の伝統を有する島四国八十八カ所巡りである。全行程63kmの札所巡りを、お遍路さんたちは2泊3日で歩く。毎年旧暦3月19日~21日(今年は5月4日~6日)には遍路市が開かれる。例年この時期には西日本を中心に全国各地から約3,000名のお遍路さんたちが、信仰と心のいやしを求めてこの島を訪れる。みかん畑の濃い緑に白装束の列が映え、青い海をバックに岩かげから1人2人と姿が現れる。そんなほのぼのとした温かい光景が、今年も開通記念イベント開催期間中のGW(ゴールデンウィーク)に見られる。
またこの時期、全国から集まるお遍路さんを、島の人々が善根宿(一般家庭が旅人に宿を提供)やお接待で家族同様にもてなすという慣習が今も残っている。この島には、歴史に培われた懐の深さを感じさせられる。橋が開通した後も、豊かな自然と飾らない温かい人情に出会える街、それが大島・吉海町である。
(豊嶋 照男)