甲子園球場約14個分という広大な敷地に、総事業費1,726億円をかけて開発された一 大プロジェクト、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が、今年3月31日、鳴物入りでオープンした。オープン後約5ヵ月、あえて夏休みの大混雑を 体験するべく大阪へと向かった。
フェリーで行けば朝イチから楽しめる
愛媛からのアクセスはいろいろあるが、今回はフェリーを利用。松山を夜9時頃に出発する便利な無料連絡バスで東予港に向かい、10時40分発のフェリーに乗船。平日にもかかわらず、港は人であふれている。これもUSJ効果か?
早朝6時前には大阪南港に到着するが、8時まで船内で休憩ができるのがうれしい。9時の開園と同時に入りたいという人にはこのルートが最適だ。南港からユ ニバーサルシティポートまではシャトル船で25分。そこから5分も歩けば、USJの門前町「ユニバーサル・シティ・ウォーク」が現れる。カラフルな色彩の 店やオフィシャル・ホテルが建ち並び、アメリカンなムードを醸しだしている。しかし通行人は足早にUSJのゲートに向かい、店内は人もまばらだ。
ゲートに到着すると、チケットブースの行列は予想したほどではなかった。「意外とスムーズに回れるかも」と、この時は期待したのだが・・・。
「1時間待ち」は当たり前と覚悟しよう
開園直後に入場したにもかかわらず、主なアトラクションはすでに長蛇の列。「ターミネー ター -60分待ち」の表示に、「他のアトラクションにしよう」と思った私は甘かった。「ライド系アトラクションは朝一か夕方」が鉄則であったのに、60分ごと きで怯んではいけなかったのだ。
ニューヨークやサンフランシスコの街並みをぶらぶら歩くと、「ジョーズ」の前にも長い行列。エクスプレス・パス をもらうための行列である。午後2時45分に行けば、待ち時間なしに入れる予約券をゲット。しかし、この予約券を使い終わるまで、他のアトラクションの予 約券はもらえない。つまり、2時45分までに他のアトラクションに乗るためには、ひたすら並ぶしかないのだ。結局、効率的に回る方法などないのだと実感。
ショーではおもいっきりハジケたい
「とりあえず、あまり待たずに入れるところを」と思い、ショー系のアトラクションを目指 す。「モンスター・ロック・アンド・ロール・ショー」はフランケンシュタイン、ドラキュラなどおなじみのモンスターたちが歌い踊るステージ・ショー。踊り も歌も質は高いと思うが、観客側のノリがもっとよければ3倍楽しいショーであったろう。シャイな日本人は、ハジケきれないのが難点だ。
その点、 後で見た「ウォーターワールド」はもっと楽しめた。前方席の観客に、バケツで水をバシャバシャと容赦なくかけるのだが、率先してかけられ役を買って出る人 も少なくなく、かなりの盛り上がりであった。確かにあれだけ暑いと水もかけられたくなるが、冬場はどうなるのか、という疑問は残った。
遊びに関してヒトはこんなにも我慢強くなれるのか!
やはり「ライド系」も少しは体験しておかねばなるまい、と意を決して「バックドラフト -100分待ち」に挑んだ。なかでは比較的短そうだ。「ジュラシックパーク -2時間45分待ち」などに比べれば・・・。
「100分待ち」と書かれてはいるものの外の列は短く、意外と早いのかも、と思ったのもつかの間、建物を抜けた中庭にはロープが迷路のように張り巡らさ れ、そこはビッシリ人で埋め尽くされていた。だまされた!と思ってももう遅い。ところどころ日除けや扇風機が設置してあるものの、ほとんど炎天下で立ちっ ぱなしである。小さな子供も多いが、グズる子はほとんどいない。意外に我慢強いなぁと、妙なところで関心することしきり。
実際には80分強でア トラクションの中に入れた。消防士の活躍を描いた映画「バックドラフト」の火災シーンを再現したアトラクションで、さんざん「熱い、危険」とのアナウンス が入ったが、むしろ外で待たされる時間のほうがあついし危険だと思ったのは私だけではあるまい。待望のアトラクション自体は正味20分。あっという間である。(涙)
リピート需要は大丈夫?
さて、県内の旅行業者は、USJオープンをどうみているのだろう。オープン当初に比べると、徐々に人気が上向いてきている、というような声もきかれた。この夏は県内からもかなりの送客があったのは間違いない。
しかし、いかんせん距離が近いため、売上面での効果がいまひとつ上がらないのが悩ましいところであろう。往復とも夜行フェリーを利用する船中2泊の旅なら、スタジオパス付きで15,000円を切るセット商品もある。
加えて9月4日に東京ディズニー・シーがオープンしたことによって、旅行業者の目はどうしても単価の高いディズニーに向かうだろう。今年の大きな目玉商品 とはいえ、2年目以降のUSJがどのように推移するのか、不安がまったくないわけではない。個人的には、見残したアトラクションも多いので、涼しくなった らもう1度くらい行ってみたい気はする。
ディズニー・ランドを体験したことで、日本人がテーマパークに求めるものは、かなりハードルが高くなっ ている。すでに語り尽くされていることではあるが、今後、リピーターを継続的に集め、当初の計画通り5~10年後の年間集客を1,200万人まで増やすた めには、積極的な追加投資で常に新鮮味を保つことが欠かせない。2002年ワールドカップに続く国際イベントとして、期待されていた大阪オリンピックがま ぼろしとなった今、海外からの旅客誘致も、アジアを中心に新たなてこ入れ策が必要になるだろう。2005年には、同じユニバーサル・スタジオがマレーシア でも開業を予定している。
開業から5ヵ月あまりで入場者は500万人を突破し、初年度目標800万人を充分クリアするペースで集客しているUSJだが、本当の実力を評価できるのは、まだまだ先になりそうだ。
(上甲 いづみ)
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンと東京ディズニー・ランド、ディズニー・シーの概要比較
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン | 東京ディズニー・ランド | 東京ディズニー・シー | |
---|---|---|---|
事業主体 | (株)ユー・エス・ジェイ | (株)オリエンタルランド | |
開業 | 2001.3.31 | 1983.4.15 | 2001.9.4 |
敷地面積 | 54ha(パーク39ha) | 80ha(パーク48ha) | 71ha(パーク48ha) |
建設投資額 | 約1,726億円(総事業費) | 3,600億円(累計) | 3,380億円(パーク内ホテル含む) |
料金 | 5,500円(12歳以上) 3,700円(4~11歳) 4,800円(65歳以上) | 5,500円(18歳以上) 4,800円(12~17歳、60歳以上) 3,700円(4~11歳) | 同左 |
消費単価 (入園料含) | 9,000円~10,000円 | 9,680円(2002年度見込み) | |
年間入場者数 | 初年度見込み800万人 5~10年後1,200万人 | 1,730万人(00年度実績) | 1,000万人 |
TDS通年稼動後、両施設合計で2,500万人 | |||
2001GW (4/28~5/6) | 380,000人(警察庁発表) | 559,000人(警察庁発表) | - |
売上目標 | 700~800億円 | 1,790億円(00年度実績) | 1,500億円 |
2,890億円(2002年度見込) | |||
従業員数 | 6,500人(パート等含む登録数) | 13,400人(準社員含む) | 新規雇用約8,000人 |
約21,000人 | |||
園内施設 | アトラクション 18 飲食 21 物販 24 | アトラクション 47 飲食 53 物販 59 | アトラクション 23 飲食 33 物販 32 |
駐車場 | 4,000台 | 8,000台(+仮設5,000台) | 6,500台(TDS専用4,000台) |
オフィシャルホテル | 3軒、計1,336室、3,371人収容 | 5軒、計3,155室、6,545人収容(他に直営ホテル2軒、1,006室) | |
主な隣接商業施設 施設概要 売上目標 | 「ユニバーサルシティ・ウォーク」 物販 27、飲食 30 初年度 90億円 | 「イクスピアリ」 物販 88、飲食 31、サービス 4 約300億円(通年稼動後見込) |