海と市街地が近接している香川県高松市。そのウォーターフロントを活かした新しいまちづ くりが国・県・高松市が主体となって推進している「サンポート高松総合整備事業」。基盤整備だけでも総事業費1,000億円という巨大プロジェクトだ。昨 年5月にはその第一陣の施設がオープンし、新しい高松の顔として認知度は高まりつつある。今回は「サンポート高松」の現在の整備状況と今後の課題などについてみていきたい。
駅ビルは乗降客と相乗効果で客足絶えない
JR高松駅に到着し電車を降りると、そこはすでに「サンポート高松」。新しくなったJR高松駅舎も含め、港湾施設、ホテル、レストランなどが集積した高松港頭地区が「サンポート高松」なのだ。
新駅舎はバリアフリー化され、1階のホームから駅前広場まで段差はない。建物は4階建てで、コンコースは吹き抜けのガラス張りとなっており、広がりのある 空間となっている。駅ビルの商業施設「COM高松」には、名物の讃岐うどんはもちろん、ファストフード、立食形式のすし店、レストラン、喫茶などいろいろ なタイプの飲食店や、コンビニ、書店のほかにカルチャースクールなども入居している。四国最多の乗降客数との相乗効果により昼食時を中心に客足は絶えるこ とがない。
ホテルはブライダル需要を取り込み好調
JR高松駅を出てすぐ目に飛び込んでくるのは、瀬戸内海に面してそびえたつ地上20階の 白亜の建物「全日空ホテルクレメント高松」だ。四国最大級の規模を持つシティホテルで、最大1,500人収容可能な大宴会場を持ち、客室数は300を数え る。そして、その全客室で光ファイバー接続による高速通信が利用できる。好立地とハイクラスの施設内容に加えて「全日空」のブランド力もあり、大型のパー ティーやブライダルの需要を取り込み、出足は好調のようだ。
ブライダルの人気を集めているのが、4階にある「クリスタルマリンチャペル」。前面をすべてガラス張りにして瀬戸内海の眺望を取り入れ、開放感を演出している。ブライダルの年間目標400件も達成可能だという。
カップルには格好のデートコース
ホテルの向かいには、海上交通の拠点「高松港旅客ターミナルビル」がある。2階は待合所 になっており、ここから港湾緑地まで2階部分でつながる回廊「高松コリドー」を通って乗り場まで行くことができる。フェリー乗り場を過ぎるとアーチ型の建 物「高松港レストハウス」が見えてくる。ここにレストラン「MIKAYLA(ミケイラ)」がある。ミケイラとは「海の女神」という意味。オシャレな外観で 店内からの眺めもよく、食事をした後、玉藻防波堤の突端にある赤灯台「せとしるべ」までの散歩など、カップルには格好のデートコースだろう。
ところで、高松コリドーや高松港レストハウスの屋根には太陽光を利用したソーラーシステムが導入されており、ここでつくられた電力は緑地内の照明等に利用されている。目立たないところにも環境への配慮がうかがえる。
2004年春には四国一の「のっぽビル」が登場
現在オープンしている新駅舎やホテルなどに続いて、第二陣の施設の整備も進行中である。サンポート高松の中核的役割を担う施設として位置づけられる「シンボルタワー」(仮称)は2004年春の完成を目指して昨年8月に着工したばかりだ。総事業費は約400億円にも上る。
シンボルタワーは、国際化と情報化に対応した香川県と高松市のシンボルとなる交流拠点施設として整備され、国際会議場や新市民会館、情報通信科学館(仮 称)などが入居する。このうち情報通信科学館については、香川県の事業としては初めてのPFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式の導入が決まってい る。
シンボルタワーの建物は、高層棟と低層棟で構成され、高層棟は高さ151.3メートルになる。完成すると、高層ビルとしては香川県庁舎の113メートルを抜いて四国で最も高い「のっぽビル」に。最上階に設けられる展望スペースからの眺めは“最高”に違いない。
今後の整備計画
事業内容 | 完成目標年度 | 整備される施設 |
---|---|---|
基盤整備 | 2003年度末 | 港湾緑地 (シーフロントプロムナード) 人工海浜 多目的広場 歩行者専用道路(南側) 多目的広場地下駐車場 |
都市施設整備 | 2004年春 | シンボルタワー (高度情報交流センター) |
2003~ 2006年度末 | 国の合同庁舎 | |
商業施設誘致 | 2003年度末 | 未定 |
「いただきさんの海鮮市」
これまで施設などハード面を中心にみてきたが、にぎわいづくりなどのソフト面はどうなっているのだろうか。
ソフト面を手がける(財)サンポート財団では「いただきさんの海鮮市」を毎月第2日曜日に開催している。サンポート沖で捕れたばかりの魚介類が市価よりも割安で手に入るとあって、大好評。「いただきさん」が、買った魚をその場でさばいてくれるサービスもうれしい。
財団では、このほかクルージングや釣り大会、クリスマスには船上カフェなどのイベントも実施している。今後も「海」をテーマとしたにぎわいづくりに力を入れていくという。
今後に残された課題
これまでにオープンした施設は、それぞれほぼ順調なスタートを切っている。しかし、今後 の計画については、いくつかの課題もあるようだ。にぎわいづくりの核となる商業施設誘致の計画では、昨年事業者を募集したが、応募事業者との条件面での折 り合いがつかず白紙に戻ったまま年を越してしまった。また、シンボルタワーや国の合同庁舎へのテナント等の入居についても、必ずしも楽観できない事情もあ るようだ。
香川県内では、サンポート高松は香川活性化の切り札の一つといわれている。活性化の切り札となるかどうかは、にぎわい創出のために官民がアイデアを出し合い、ハード・ソフト両面の充実を図ることができるかどうかにかかっている。
(松尾 明彦)