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西日本レポート

【大分県大分市】W杯サッカー、大分でもキックオフ!! - 全世界が熱狂するFIFAワールドカップがやってきた -

2002.06.01 西日本レポート

W杯サッカー、大分でもキックオフ

いよいよサッカーの第17回ワールドカップ(W杯)の開幕である。5月31日の開幕戦 (ソウル)から6月30日の決勝戦(横浜)まで、世界の目が日本と韓国の20会場を舞台とした世紀の祭典に注がれる。世界の各大陸の激しい予選を勝ち抜い た32の代表チームが、約1ヶ月にわたり、国や民族、チームのプライドを賭けて戦い抜く。4年に1度、国際サッカー連盟(FIFA)が主催するFIFA ワールドカップは、オリンピックをも凌ぐ世界最大のスポーツイベントである。
今大会は、アジアで初めて開催される日本と韓国の「共同開催」。日本では、横浜市や埼玉県、大阪市など10の自治体で開催される。中国・四国・九州地区では唯一の開催地であり、ワールドカップ開催を契機に地域活性化を目指す、大分県の熱き取り組みをレポートする。

巨大スタジアム“ビッグアイ”で感動を!

大分駅から車で南東方面に約20分走ると、会場となる大分スポーツ公園総合競技場 (BIG EYE・・・ビッグアイ)が小高い丘に姿を現す。球体をモチーフとした開閉式屋根のある巨大なスタジアムは、まさに“最先端”と“エンターテイメイト“が 凝縮された未来の形と呼ぶにふさわしい。このビッグアイには、透光率25%という高レベルのテフロン膜を使用した開閉式の屋根や冬芝の生育を促進するため のアンダーヒーティング・システムなどがある。さらに、スタジアム上部の梁を最高時速30kmで走る世界初の「キールアーチ走行カメラ」も備えている。こ のカメラにより普段では見られない上空からの映像を送り出す。
ビッグアイでの試合は、8グループによるリーグ戦を行うファーストラウンドとして6月10日(月)にHグループのベルギーVSチュニジア、6月13日(木)にGグループのイタリアVSメキシコ、各グループ2位までの16チームが進出するセカンドラウンドとして、6月16日(日)にAグループの2位(フランス、セネガル、ウルグアイ、デンマーク)VS Fグループの1位(アルゼンチン、ナイジェリア、イングランド、スウェーデン)の 3試合が行われる。特に強豪が揃ったセカンドラウンド(決勝トーナメント1回戦)であるAグループ2位とFグループ1位の対戦は必見。この試合の勝者が決 勝まで勝ち残る公算は大であろう。ビッグアイのフィールドから“ヒーロー”が生まれ、“伝説”が生まれると思うと、今から心が躍る。

BIG EYE(ビッグアイ)の施設概要

所在地大分市大字横尾1351
用途サッカー     ・     陸上兼用競技場
サッカー     :     FIFA基準に適合
陸 上     :     第1種公認競技場
延床面積92,882m2
建築面積51,830m2
高さ57.46m
収容人員約43,000人
構造鉄骨造及び鉄筋コンクリート
屋根簡易開閉式
建設費250億円

開催にむけての熱き取り組み

この大分大会での3試合は、全世界に放映され、大分の名前も一躍有名になるだろう。大分 県が開催に名乗りをあげたのは、大分県ワールドカップ推進局の樽本次長によると、「ワールドカップがオリンピックと違って地方都市でも分散して開催できる こと」や「国際化の中で、大分が韓国や中国などと地域間交流を以前から深めてきたこと」、「ワールドカップは、やり方いかんで地域振興にも十分役立つこ と」などの理由からだという。当初、日本では15の自治体が名乗りをあげ、その後10ヵ所に絞られたが、大分は念願の開催にこぎつけた。もちろん、九州地 区という地域性が考慮されたこともあるが、それ以上に開催に向けて知事をはじめ県民の熱い思いや積極的な誘致運動があったことはいうまでもない。また、 「是非、九州で!」という九州全県の後押しや協力もあったという。

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開催の準備は着々と

平成8年5月31日に日韓共同開催が決定されると、大分県や市町村、民間団体等が同年7 月1日に「ワールドカップ大分推進委員会」を立ち上げた。さらに平成9年7月4日には「ワールドカップ大分推進委員会幹事会」を設立し、その後、「交通・ 輸送対策専門委員会」や「関連イベント専門委員会」など7つの専門委員会を設立、今日まで様々な準備を行ってきた。
自治体に加え、民間の協力な どもあり、その成果は順調である。都市機能のインフラが整備されただけでなく、ソフト面でも大きな進展がみられる。例えば、金融サービス面では、ユーロの 両替が銀行や郵便局でも取り扱い可能となったことや、海外からのお客様に対してクレジットカードが使えるよう加盟店も増加してきたことなどである。また、 ボランティアの募集や登録も活発である。当初、募集人員1,600人に対して、約2,300人もの応募者があった。観客輸送案内業務や関連イベント業務、 救護業務などに携わる開催地ボランティアを昨年末現在で2,201人登録しているが、現在も増えつづけている。救急医療体制やフーリガン対策なども整備さ れてきており、開催の準備は着々と進んできた。

経済効果もさることながら、県民の自信と誇りが財産に

0206-04 いよいよ開幕するワールドカップであるが、大分県での経済効果はどれくらいであろうか。 日本銀行大分支店によると、県内消費総額は約60億円(観戦チケット購入費、海外渡航・国内航空費用を除く)と試算している。内訳は、1日あたり、宿泊費 5億円、交通費5億円、飲食費やお土産代など10億円の計20億円。3日間の開催で60億円を見込んでいる。これは大分県の県民最終消費支出額(平成10 年度2兆4,766億円)を0.08%押し上げる効果がある。また、大分県の1日あたりの大型小売店売上高は約6億円であり、ワールドカップ開催3日間 で、約10日分の売上高に相当する金額であり、地元大分での経済効果は、かなり大きいといえよう。
ただし、この経済効果は一過性である。このため、県は、経済効果もさることながら「ワールドカップ開催の経験は、有形無形の財産になる」と、開催に向けての取り組みはもちろんのこと、将来を見据え、今後の地域活性化に繋がる活動も積極的に行うとしている。

ワールドカップを契機に地域の活性化を

全国のワールドカップ開催の自治体は、地域活性化の起爆剤としてスタジアムや道路、鉄道などのインフラの整備を進めてきた。しかし、数試合のお祭りが終わった後は、すぐに巨大スタジアムの維持費をいかに賄っていくかという問題が起こってくる。
ビッグアイでも年間の運営費は約3億円かかるため、ワールドカップ後は、J2の「大分トリニータ」の使用はもちろん、県民が楽しめるコンサートやスポーツ等のイベントを色々と開催して、運営費を賄う予定である。
さらに、県民誰もが利用できるよう、ビッグアイのフィールドやトレーニング室を広く開放し、フィールドの使用料金も1時間あたり9,100円(生徒・児童 の場合は4,550円)と他のスタジアムに比べて低料金にするなど、多くの人々がスポーツを気軽に楽しむことができるような環境づくりも行うとしている。
県のこうした取り組みに加え、民間企業の活動も盛んである。ビッグアイのある広大なスポーツ公園である「大分スポーツパーク21」の周辺に、シネマコンプ レックスや観覧車を併設した大型複合商業施設が今年4月にオープンした。また、「パークプレイス大分公園通り」という全1,600区画の住宅地も、現在、 建設中である。ワールドカップ開催を契機に、「大分スポーツパーク21」の周辺が、新しい大きな“街”へと変貌していく。今後の発展が非常に楽しみであ る。

最後に、ワールドカップ開催の意義について、樽本次長は、こう語った。「このビッグイベ ントをやり遂げることで大分県民が大きな自信と誇りを持つだろう。また、ビッグアイなどの施設を利用して、地域の住民が、スポーツを愛し、楽しんでくれれ ば本当に嬉しい」と。大分におけるワールドカップの成功とその後の地域の活性化に期待したい。

(桐嶋 正彦)

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