JR福山駅西側に活気を呼び戻す新しい大型複合商業施設「福山LOTZ(ロッツ)」が4月25日オープン、好調なスタートを切っている。
2000年12月25日「福山そごう」が閉店し、沈滞していた駅周辺に新しい人の流れが生まれ、出店も活発化している。
今回は、中心市街地活性化の使命を受けてオープンした「福山ロッツ」についてレポートする。
施 設 概 要
運営会社 | 丸田産業株式会社 ・・・(天満屋関連会社) | |
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営業時間 | 午前10:00~午後8:00※ レストラン街(8・9階)午前11:00~午後10:00 ふくやま書道美術館 午前10:00~午後7:00 | |
広 さ | 本館・第一駐車場 | 72,676m2 |
第二駐車場 | 6,781m2 | |
第三駐車場 | 15,866m2 | |
駐車場収容台数(3ヵ所合計) | 1,285台 | |
テナント数 | 114 | |
ふくやま書道美術館(常設・特別展示室)(8月オープン) | ||
従 業 員 | 約1,000人 | |
休 業 日 | (原則)年中無休 |
まさか!?の福山そごう閉店
バブルが弾けた1992年4月、総事業費400億円と言われる百貨店「福山そごう」がオープンした。同店は、JR福山駅の西400mに位置し、周囲に広い道はなく、必ずしも好立地ではなかった。
百貨店としては、既存の天満屋福山店と競合、また、1999年には郊外に大型店の出店が続くなど、厳しい経営を強いられていた。
そのような中、そごうが破綻。それに伴い2000年12月25日、「福山そごう」も閉店、オープン以来8年8ヵ月の幕を閉じ、近隣は人通りが激減、店舗撤退が続いた。
破産管財人は都市百貨店等に出店を持ちかけたが話はまとまらず、2002年3月、最終的に福山市が建物を約26億円で取得、土地は所有者から市に寄贈されることとなった。
テナントは、まずビル全体を福山唯一の百貨店を持つ天満屋の関連会社「丸田産業(株)」が賃借し、その上で募集する形を採った。結果、福山初登場のテナントを含め114店舗を持つ大型複合商業施設の誕生となったのである。
福山市は最終的に約33億円という巨費を投じて旧そごうビルを取得・整備したが、その理由は、街が失った“にぎわい”、そして“雇用”の創出であった。
2年4ヶ月の空白を経て、福山ロッツ開店!
福山そごう閉店時の年度売上高は224億円であったが、その多くが消えたままとなっている。それらは広島市や岡山市に、また郊外に出来た各種量販店へと流出した可能性が高い。同市と天満屋は、このまま消費を市外に流出させてはならないとの危機感があり、思惑が一致。そこで登場したのが、売場面積39,000m2の新しい専門店館「福山LOTZ(ロッツ)」である。
今年4月25日に2年4ヵ月の空白を経て、大型複合商業施設として開店。ストアコンセプトは「ライフ・スタイル・バリュー・アップ」、地域のファミリーに価値あるライフスタイルを提案するショッピングセンターを目指す。
初日の来店客数は5万5千人、売上高は1億3千万円に上った。ロッツでは、初年度の来店客数500万人、売上120億円を見込んでいる。
オープン後の状況は次のとおり。
- 来店客数 累計62万人(5月末)
週末は平日の2倍の来店客数 - 客層
週末 ヤングファミリー層中心
平日 母と娘、ミセス同士 - 駐車場利用状況
日曜日 4,000台、土曜日 3,500台、平日 2,000台
ナンバープレートからみた来店客のエリア別割合は次のとおり。
福山ロッツが目指す商圏は東西半径30キロ、南北半径20キロ。(西は三原、東は岡山県鴨方、北は府中、南は鞆)
テレビCMの配信エリアの関係で、見込みよりも遠方の広島市等、西方面からの来店客も多く見られる。
ターゲット
生活向上志向の強い団塊ジュニアの女性とそのファミリー
ターゲットとしている客層は「ヤングファミリー」だが、オープンしてみると、祖父母も伴って親子3代での来店が多く、嬉しい誤算となっている。
名称の由来
英語で“満載している”という意味の「LOT」に、究極を意味する「Z」をつなげた造語。ファッション性や感性の優れた多くの情報を発信する拠点にしたいという意味を込めている。
福山初登場のテナント60店舗
福山ロッツの魅力を挙げると、主に次の5点である。
- 1階すべてを占める、中四国初登場のコムサストア
ウェアから生活雑貨、フルーツカフェまであり、同ストアでは全国最大級の広さ - グルメコーナーの充実
9店舗のレストランと13店舗のフードコート。フードコートは330席で、広島県内最大規模。 - 福山市初登場のテナント60店舗
うち中四国初登場も4店舗
・コムサストア(1階)
・ソーダファウンテン モロゾフ(2階) →全国5店目
東京・渋谷で人気爆発!
約40種類の色鮮やかなソーダ水が楽しめる。
・ミキハウス こどもぱぁく(4階) →全国2店目
衣類から雑貨・玩具、乗り物まで子供用品なら何でも揃う大型ショップ。
・ ハロー・キティ・スタジオ・ヘア・プラザ(4階) →全国3店目 - 福山最大規模のショップ多数
・うさぎや(地下2階) → 500 坪
ワンフロアで日本最大級の文具専門店
・エクセル(3階) → 300 坪
海外ブランド輸入品専門店
・廣文館(5階) → 500 坪
大規模書店
・ファインズ(6・7階) → 2,200 坪
家具から食器、インテリア小物、ガーデニング用品などが揃うホームファッション・ストア - 駐車スペース、駐車場サービスの充実
・駅前ながら約1,300台の収容能力
・1,000円以上の買物で3時間まで無料
店づくりでこだわったことについて、副館長の卜部修治氏は、次のように語る。
「中途半端なことはやめ、他所にはない魅力あるテナントに、広いスペースを大胆に使ってもらう。そして、継続的にお客様に来ていただくために、飲食部門を強化し、毎日でも気軽に立ち寄っていただける仕掛けをする。また、『学ぶ』という切り口で、英会話教室や料理教室などを入れて特徴を出す。」
事実、各階の核となるマグネットブランドには、大胆にスペースを割き、来店客を着実に惹きつけている。また、クッキングスクールは、あまりの人気で順番待ちの状態、大盛況である。
加えて、これらの来店客を効率よく駅前や天満屋福山店に回遊させるため、ロッツ、駐車場、JR福山駅、天満屋福山店との間は無料巡回バスで結ばれており、お客様の利便性向上に役立っている。
シャトルバス・ルート
おわりに
取材にうかがったのはオープン後2ヵ月ころであるが、テナントのすべてが好調というのではなく、やはり濃淡があるという。やはり、人が来ても魅力ある店でなければ、そのチャンスを活かせないということであろう。
周辺の活性化については、好影響は既に出てきている。人の流れが帰ってきた通りには、ヘアサロンなどの開店が続いており、商店街の様子に明らかな変化が見られる。これもまた上記同様、帰ってきた人の流れを定着させる、魅力ある店舗運営・まちづくりが鍵となるであろう。
駅前市街地活性化の使命を受けてスタートした福山ロッツ。こだわりのプロデュースが魅力あるテナントを呼び、そのテナントが話題を・人を呼び、人が人を呼ぶ!それらの相乗効果で地域のにぎわいと雇用を創出している。
文字通り、話題“満載”、楽しさ“満載”の福山ロッツ、これからも目が離せない情報発信地である。今後も期待したい。
(兵頭 繁嗣)