今回で5回目を迎える、くろーずあっぷ「合併市町村を訪ねて」は2004年11月に誕生した新「西条市」を紹介します。
1.県内で4番目の10万都市の誕生
2004年11月1日、西条市、東予市、丹原町、小松町の2市2町が合併し、新「西条市」が誕生した。新市の面積は、509.2km2と久万高原町、西予市に次いで県内で3番目に大きな行政区域となった。
また、新市の人口は、116,389人と松山市、今治市、新居浜市に次いで県内で4番目に多い10万都市となった。
合併後の県内の人口10万人以上の都市
新市町名 | 人口(人) | |
---|---|---|
1 | 松山市 | 511,316 |
2 | 今治市 | 179,208 |
3 | 新居浜市 | 127,553 |
4 | 西条市 | 116,389 |
資料: 住民基本台帳(2004年3月末現在)をもとにIRC作成。
今治市は合併後の合計数。
2.新市は県内一の工業都市
この地域の海岸部は遠浅のため古くから埋め立てにより、工業用地として積極的に開発されてきた。石鎚連峰に源を発する良質かつ豊富な水資源があり、四国初の大手ビール工場や半導体メーカーなどが立地している。その他、日本最大の建造量を誇る造船グループの最新鋭の工場立地や大手鉄鋼メーカーの工場進出もあり、新市の臨海部は県内一の工業地帯となっている。
こうした工場進出等を受け、当地域の工業品出荷額等は5,846億円と、これまでトップであった四国中央市の5,813億円を上回り、愛媛一の工業都市に踊り出た。
合併後の市町村別工業品出荷額等順位(上位3位)
新市町名 | 工業品出荷額等(億円) | |
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1 | 西条市 | 5,846 |
2 | 四国中央市 | 5,813 |
3 | 今治市 | 5,630 |
資料:愛媛県「平成15年工業統計調査結果(速報)」をもとにIRC作成。
今治市は合併後の合計出荷額。
一方、農業分野に目を転じると、この地域は道前平野を中心に米麦などの栽培が盛んで、県内でも有数の穀倉地帯である。また、旧丹原町域はあたご柿の日本一の生産地であるほか、ブドウ・スモモ・イチジクの果樹栽培も盛んである。このように新市は、経営耕地面積(5,422ヘクタール)、農業総生産額(94.4億円)ともに、県内第2位の地位を占め、農業も盛んな地域である。
3.様々な交流拠点を整備
新市は、西日本の最高峰である石鎚山の登山やスキー、参拝を中心として県内外から多くの入込客がある。また、ビールや清涼飲料水の工場見学、造船所の進水式の一般公開など、産業観光の取り組みも盛んである。
旧西条市は「水の都」と言われ、まちの随所に地下水が自噴する「うちぬき」がある。「うちぬき」とは、石鎚山系に降った雨が地下に大量に浸透して天然の地下ダムを造り、パイプを打ち込めば水が噴出する自噴水の総称であり、市内に約2,000本あると言われている。この「うちぬき」を利用した公園の整備や豊富な水をテーマとした資料館の整備なども積極的に進められようとしている。
旧東予市には本谷温泉、東予国民休暇村、旧小松町には「石鎚山ハイウェイオアシス」に椿温泉こまつなどの観光施設があり、旧丹原町には西山興隆寺の紅葉や七夕夏祭りなどもある。
このように、この地域は、豊かな自然や歴史、文化資源に加え、地場産業も活用した交流拠点づくりを進めている。
4.快適環境実感都市を目指して
新市は、石鎚山系や瀬戸内海をはじめとする豊かな自然の恵みを受けて、人々が心豊かに快適で、質の高い暮らしを送ることができるよう、「人がつどい、まちが輝く、快適環境実感都市」を将来構想の中で標榜している。また、少子化の進展などにより、県内の多くの市町村が人口減少に直面する中、人口を12万人に増加させる積極的な目標を掲げている。
交通ネットワークに目を転じると、関西と直結する定期旅客航路を持ち、松山自動車道としまなみ海道に通じる今治小松自動車道の結節点に位置するなど交通の要衝にあたる。また、この地域には県の地方局など、東予地域を所管する主だった行政機関が設置されており、行政面でも今後東予地域の拠点として発展していく大きな可能性を秘めているといえよう。
昨年の秋には相次ぐ台風によってがけ崩れや家屋の倒壊など、かつてない災害に見舞われた。安全安心といった基本的な生活基盤の整備と、恵まれた産業基盤等を一層充実させ、住んでいる人、訪れる人、どちらにとっても文字どおり「快適環境」を実感できる中規模都市を実現し、より存在感のある都市となってほしいものだ。
(木内 淑雄)