今回で6回目を迎える、くろーずあっぷ「合併市町村を訪ねて」は、今年1月11日に誕生した新「大洲市」を紹介します。
豊かな自然環境に恵まれた新市が誕生
新市は旧大洲市と旧長浜町、旧肱川町、旧河辺村の1市2町1村が合併し、誕生した。総面積は約432km2、人口は約5万2千人となった。
新市の東部には標高700メートルを超す山々があり、その中央部を県下最大の一級河川である清流肱川が流れ、伊予灘に注ぎ込んでいる。
また、新市は、松山自動車道と国道56号、197号、378号、441号の4本の国道が交わる県西部の交通の要衝でもある。
歴史・文化・自然を活かした観光を推進
新市には、歴史・文化・自然に育まれた観光資源が数多く存在している。その中心部にある旧大洲市は、かつて伊予大洲6万石の城下町として栄えた歴史をもっており、「伊予の小京都」とも呼ばれている。そこには、戦後復元されたものとしては日本一の高さ(約19メートル)となった大洲城も昨年9月に完成した。
また、明治時代に建てられた「臥龍山荘」や昭和30年代の駄菓子店が並ぶ「ポコペン横丁」、江戸・明治の古い街並みが今もなお残っている「おはなはん通り」などもあり、まち歩きの楽しさが味わえる。入り込み客と地域住民の交流拠点にもなっているまちの駅「あさもや」では、地域の見どころや穴場情報が得られるほか、地元ならではの物産を購入することもできる。さらに、肱川では、夏には有名な「うかい」が、秋には「いもたき」が開催されている。
伊予灘に面した旧長浜町の肱川河口には、昭和10年8月に完成し、現役では国内最古の道路開閉橋「長浜大橋」があり、秋から冬にかけて大洲盆地で発生した霧を伴った強風が、肱川に沿って伊予灘へ流れ込む『肱川あらし』がみられる。
旧肱川町には、県内で初めて農産物直販所と交流施設、商業施設が集積した道の駅「清流の里ひじかわ」があり、「肱川ラーメン」など魅力ある特産品開発にも積極的に取り組んでいる。また、小規模ではあるが、落ち着いた時間を過ごせる「小藪(おやぶ)温泉」や「鹿野川荘」がある。
旧河辺村には、「坂本龍馬脱藩の道」があり、坂本龍馬にちなんだイベントが毎年開催されている。また、全国的にも珍しい8つの屋根付橋があり、「浪漫八橋」とも呼ばれている。
このほか新市では、体験農園を活用したグリーン・ツーリズムやカヌーなどを利用した自然体験観光が満喫でき、体験・交流・滞在型の観光地づくりが展開されている。
さらなる産業振興を目指す
農林水産業に目を転じると、米や野菜、肉用牛、豚などを主な生産物とする農業が盛んで、特にトマトの収穫量は、久万高原町に次いで県内2位となっている。また、林業では木材を中心に、しいたけや栗などの栽培も行われている。
水産業をみると、伊予灘では、あじ、かれい、ふぐなどの水揚げがあり、肱川では鮎、うなぎなどが捕れる。特に、旧長浜町で水揚げされるトラフグは、身が引き締まり、日本一との呼び声も高い。しかし、近年では輸入品の増加や後継者不足などにより農林水産物の生産量はやや伸び悩んでいる。
工業では、大手企業の出先工場などが立地している東大洲工業団地や、臨海部には57の企業が立地している晴海・拓海工業団地がある。商業では、JR大洲駅周辺や大洲インターチェンジ周辺に大規模な商業施設が立地している。
「活力きらめくまちづくり」を期待
新市では、将来像を「きらめき創造 大洲市」と定め、産業の振興や保健・医療・福祉の充実、景観保全など6つの基本目標を掲げている。しかしながら、大手出先工場の規模縮小計画が浮上するなど、厳しい船出となった一面もある。このため、農林水産業と商工業、観光など、地域産業のバランスのとれた発展を図り、雇用の創出を目指すことがこれからの重要な課題となろう。
今後、地域の特性を活かした企業の育成や誘致を行うと同時に、地域産業の連携をさらに強化していくことで「きらめく肱川流域都市」がますます発展することを期待したい。
(越智 洋之)