今回で最終回を迎える、くろーずあっぷ「合併市町村を訪ねて」は、2005年4月1日に誕生した新「伊方町」を紹介します。
2町合併から3町合併へ
2005年4月1日、旧伊方町、旧瀬戸町、旧三崎町の3町が合併し、新「伊方町」が誕生した。新町の総面積は94.36km2、人口は約13,000人となった。
旧伊方町、旧瀬戸町の2町は2002年9月6日、任意の合併協議会を発足して事前協議を重ね、2003年1月1日に法定合併協議会を設置した。
これに対し、旧三崎町では、2003年2月23日、2町との隣接合併か新八幡浜市との飛び地合併かの枠組みを問う県内初の住民投票を行った。投票率は83.27%と住民の関心は高く、町民は隣接町との合併を選択し、3町での合併が決定した。
四国最西端、日本一細長い半島にある
新町は、背骨部分に半島特有の200~300m級の低い山地を東西に連ね、リアス式海岸独特の変化に富んだ景観美を有する日本一細長い佐田岬半島の大部分を占める。四国の最西端に位置し、九州と四国をつなぐ玄関口として重要な役割を担う地域でもある。
エネルギーのまち
新町の特徴として第1に豊富なエネルギー資源が挙げられる。3基の原子炉を持つ伊方原子力発電所の発電量は、四国の総発電量の約40%を占め、四国最大の電気エネルギー供給基地となっている。
また、新しいクリーンエネルギーとして、今、風力発電施設の設置が進んでいる。旧瀬戸町地域には、この地域に特有の強風を利用する中四国最大規模の巨大な風車が11基(11,000kW)あり、年間2,900万kWの電力を供給している。更に、2007年3月までに、旧三崎町地区・旧伊方町地区に相次いで20基(20,000kW)・12基(18,000kW)の風力発電施設を設置する計画がある。完成後は、新町全体で一般家庭の約31,000世帯分に当たる年間1億1,900万kWの電力を供給できる予定であり、国内有数の風力発電施設の集積地となる。
将来に向けた子育て支援・高齢化対策
新町は、20年後には高齢人口が生産年齢人口を上回り、30年後の人口は、現在のおよそ半分になると予測されている。このため、新町としては、積極的に子育て支援・高齢化対策等を行っていく考えである。
具体的な子育て支援としては、旧伊方町にあった3人目以降の子供に誕生時から小学校入学時までに1人当たり計100万円の祝い金を交付したり、大学生に奨学金として毎月45,000円を無利子で貸し付けたりする制度を全町に広げる。高齢化対策としては、これまで旧町それぞれで特別養護老人ホーム等の介護・福祉施設の充実を図ってきたが、今後は、在宅高齢者の“足”を確保するため、コミュニティバスの運営等も検討している。
一次産業を核としたまちづくり
高齢化により、地域の活力が低下することが懸念される中、新町としては、地域の基幹産業である農業と漁業の活性化に重点的に取組んでいく考えである。この地域は、年間を通じて温暖な気候に恵まれ、段々畑にはハウスミカンや糖度の高い晩柑類が実る。また、全国的に有名な関アジ・関サバと同じ海域で捕れる「岬(はな)アジ・岬(はな)サバ」のブランド化を進めている。その他、「金太郎芋」等新たな特産品を開発中である。
更には、一次産品の生産だけではなく、その加工によって付加価値を見出し、住民の就業の場を確保すると共に、町外からの観光客を呼び込み、地域の活性化に結び付けていくことを考えている。集客の目玉として、昨年掘削され、泉質が良いと評判の亀ヶ池温泉の整備を行う計画もある。
“住民の満足度を向上させるために、地元独自の資源をいかに活用するか”をテーマに町民・地域・行政が一体となってまちづくりに取組み、自然や文化に抱かれた“よろこびの風薫るまち”となることを期待したい。
(増田 志穂)