シリーズ「四国の『道の駅』を訪ねて」第4回は、高知県の香南市夜須町にある「やす」を紹介する。

道の駅「やす」

松山市内から車で走ること約2時間、高知自動車道「南国インターチェンジ」を降りて、室戸方面にさらに25分ほど走ると、広大な公園「ヤ・シィパーク」が見えてくる。その中に、平成13年8月に登録された高知県内で17番目の道の駅「やす」がある。施設周辺には、美しいテーブル珊瑚が見られる「大手の浜」や国指定史跡天然記念物の「龍河洞」のほか、野中兼山が築造した日本最古の掘り込み港である「手結（てい）内港」などがある。

施設の概要

高知県産の杉を使用したログハウス調の建物内には、野菜や魚介類を扱う産直店をはじめ地場産食材を使った和食レストランやインド料理のレストラン、土産物店、ジーンズショップなど9つの個性あふれる店舗がある。無料駐車場は87台収容できるが、土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線の夜須駅が隣接しているため、列車で訪れる人も年間10万人と非常に多い。
　平日は高知市内からのリピーターが多いが、休日になると、四国他県や岡山方面からも訪れるそうだ。食事・休憩・買い物が楽しめる交流拠点として、多くの利用客で賑わう。

とにかく大きい「ヤ・シィパーク」

「ヤ・シィパーク」（正式名称は高知県立手結港海岸緑地公園）は、海水浴場、マリンスポーツ施設、道の駅、各種飲食施設、直販所が集まった複合施設で、平成14年6月にオープンした。この名称は、夜須町の「ヤ」と、海を意味する英語のseaの「シィ」、そして公園の中央広場に植えられているワシントンヤシにちなんで付けられた。
　44本のワシントンヤシが植えられた南国ムードいっぱいの、5.5ヘクタールの広大な敷地には、ビーチハウスや芝生広場、バーベキューサイト、アスレチック施設などがある。多様な施設・設備を複合的に組み合わせた全国的にも珍しいこの海浜公園は、子供から高齢者まで幅広い年齢層に人気があり、年間約70万人が訪れるそうだ。

高齢者にやさしいバリアフリー対応

「ヤ・シィパーク」のもう1つの特徴は、バリアフリーに対応していることである。砂浜に続くボードウォーク（木の遊歩道）は全長530mと西日本一の長さを誇り、のんびりと海辺の散策が楽しめる。また、ビーチハウスは、車椅子でも利用できるトイレやシャワーを完備しており、アウトドア用車椅子をレンタルすればビーチにも降りることができる。元々、「身体の不自由な車椅子の方が1人で訪れても楽しむことができる」ことをコンセプトに設けられたらしいが、これを実感できる造りになっていた。ちなみに、バリアフリーの海水浴場は、高知県ではここだけである。

おすすめの食べ物

道の駅の店舗の中で最も売上を伸ばしているのが、地元でとれた農産物や海産物を販売する生産者直売所「やすらぎ市」である。元々高知では施設園芸が盛んだが、全国的にも珍しい立体栽培などによって糖度の高い果実を生産している。中でも1本の苗に1玉だけを実らせた「エメラルドメロン」や「ルナ・ピエナ（スイカ）」などはブランド化されており、贈答用として人気がある。価格は時期によって異なるが、それぞれ1個3～4千円程度するようだ。
　また、平成18年3月に売り場内に新設された「べジフルッタ」では、これら地元産のフルーツを使ったアイスクリームやフレッシュジュースを販売している。試しに「ルナ・ピエナ」のジュースを飲んだところ、大変甘く美味しかった。立ち寄ったら是非ご賞味あれ。

イベントが盛りだくさん

「ヤ・シィパーク」では、年間20以上のイベントが開催されている。中でも、8月15日に開催される「手結盆踊」は、350年以上の伝統があり、高知県の無形文化財に指定されている。その他にも、親子で参加できるシーカヤックやヨットの体験教室なども年間を通じて開催されている。なお、毎年冬には、「海辺のクリスマスイルミネーション」が実施されており、幻想的にライトアップされたヤシの木や、約2万個ものイルミネーションで飾り付けられた夜景を楽しむことができる。
　イベント誘致に奔走される駅長の山本宏幸氏から、「太平洋を眺めたくなったらおいでください」とのメッセージをいただいた。老若男女、みんなが癒され、時間が経つのを忘れてしまう道の駅である。

（山本　育矢）