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四国の「道の駅」を訪ねて

第九の里(徳島県鳴門市) -ドイツ人俘虜との交流を語り継ぐまち- (2007年7月) 

2007.07.01 四国の「道の駅」を訪ねて

【概要】 道の駅「第九の里」

徳島県鳴門市大麻町檜字東山田53
TEL・FAX 088-689-1119(物産館)
営業時間 9:00~17:00
休館日12月28日~12月31日

シリーズ「四国の『道の駅』を訪ねて」第7回は、徳島県鳴門市にある道の駅「第九の里」を紹介する。

道の駅「第九の里」

「第九の里」は、2005年5月に登録され、翌年7月にオープンした徳島県内で最も新しい道の駅である。
 松山市内から松山自動車道、徳島自動車道を 経て、藍住(あいずみ)ICで降りると、10分ほどでドイツ村公園内に位置する「第九の里」に到着する。松山市内からは約3時間のドライブだ。
 第一次世界大戦時、ドイツ兵俘虜(ふりょ)を収容した板東(ばんどう)俘虜収容所跡を整備したドイツ村公園は、ドイツ兵の慰霊碑などもあり、歴史・文化を感じさせてくれる場所である。この点が評価され、2006年10月には(社)日本公園緑地協会が主催する「日本の歴史公園100選」にも選ばれた。
 また、この地は1918年に日本で初めてベートーヴェンの「第九」が演奏されたことでも有名で、この駅名の由来にもなっている。

 

鳴門とドイツのコラボレーション

道の駅の建物は、板東俘虜収容所で実際に使用されていた兵舎(バラッケ)を移築したもので、国の登録有形文化財にも指定されている。移築するまでは農家で牛舎として使用されていたらしい。この建物の中に、地元の物産品を販売する「物産館」と、ヨーロッパのお菓子やドイツ風軽食を楽しめる「ドイチャーインビス」がある。
 「物産館」は、鳴門市と周辺4町(板野町、藍住町、北島町、松茂町)を中心に、県内産品を取り扱っている。看板商品は、鳴門わかめ、なると金時や、近くに窯元の集落がある大谷焼など。大谷焼は、多くの窯元の製品を紹介するため、2ヵ月に1回のペースで入れ替えて、展示販売しているそうだ。
 副館長の矢野久美子氏は、「地元の人に愛され、活用される道の駅を目指している」と言う。そのため、どこにでもある土産品等の陳列はできる限り避け、地元産品にこだわっている。
 「ドイチャーインビス」とは、ドイツ語で「ドイツ風軽食所」の意味。日本で例えると、たこ焼き屋のようなものだとか。ドイツでは、ビール片手にソーセージをほおばりながら、わいわいがやがやと賑わっているそうだ。

物産館の看板商品「鳴門わかめ」

物産館の看板商品「鳴門わかめ」

店長の五島(ごとう)泰市郎氏は実際にドイツに行って、メニューや味を研究しているとのことだが、その結果、最近メニューに加えたのが、ドイツの若者にはおなじみの「カレーブルスト」。カレー風味のソースで楽しむソーセージとパンの軽食セットである。
 私もごちそうになったが、ライ麦を配合したドイツ風パンは香ばしく、非常においしかった。当店の看板メニュー「カレーブルスト」、皆様もお試しあれ。

「ドイチャーインビス」と「カレーブルスト(写真左下)」

「ドイチャーインビス」と「カレーブルスト(写真左下)」

 

ドイツとの交流を伝えるドイツ館

「ドイチャーインビス」がドイツの“食の発信地”なら、「ドイツ館」は“文化の発信地”。「旧ドイツ館」は1972年に建設されたが、ドイツ村公園の整備を機に、1993年に新しく建設され、公園の中心的存在となっている。
 館内には、収容所のミニチュアや、「第九」を演奏するドイツ兵たちの姿を実物大の模型で再現した「第九シアター」のほか、当時の写真など多くの貴重な資料が展示されている。

ドイツとの交流を伝える「ドイツ館」

ドイツとの交流を伝える「ドイツ館」

 

周辺には見所たくさん

その他にも、ドイツ村公園の周辺には、見所が多い。まず、映画「バルトの楽園(がくえん)」の撮影が行われた「BANDOロケ村」。総工費3億円、6ヵ月もの期間をかけて、当時の収容所の雰囲気を忠実に再現したロケセットは一見の価値がある。ボランティアガイドが話す撮影裏話も非常に面白かった。
 また、神社仏閣に興味がある人には、四国八十八ヶ所霊場の一番札所「霊山寺(りょうぜんじ)」、二番札所「極楽寺」や、阿波一の宮「大麻比古(おおあさひこ)神社」などがお勧めだ。

 

「うず潮」だけじゃない鳴門の魅力

鳴門といえば、まず頭に浮かぶのが豪快な「うず潮」。私もその一人である。しかしながら、今回の取材を通じて、一昔前のドイツ兵俘虜との交流を今なお大切に伝える地元の動きを知り、是非紹介したいと感じた。今後も、歴史・文化を伝え、地元に愛される施設として、ますます発展していくことを期待したい。

(薬師神 正浩)

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