「白鷺城」の別名を持ち、日本で最も美しい城と言っても過言ではない姫路城。国宝であり 世界遺産でもある同城は、初めて姫路を訪れた人なら、誰しもが足を運ぶ、観光のシンボルとなっている。ここを舞台に、今年4月、「第25回全国菓子大博覧 会・兵庫(姫路菓子博2008)」が開催される。今回は同博覧会を中心とした姫路市の観光客誘致の取り組みについて紹介したい。
色々な顔を持つ都市、姫路
姫路市は、穏やかな瀬戸内の海に面した播磨平野の中西部に位置する。古くから交通の要衝と して発展してきたが、臨海部には大規模工場が多く立地する工業都市でもある。一方で、幾つもの史跡・文化施設を持ち、豊かな自然にも恵まれていることか ら、2006年度の観光客数は約880万人を数え、観光都市の顔も持つ。2006年には周辺4町と合併し、観光資源はさらに豊かになった。
姫路市観光交流推進計画
政府が「観光立国」の実現に向けた政策を進める中、観光は重要な産業と位置づけられてい る。姫路市においても「国際観光・コンベンション都市姫路」に向け、2007年3月に「観光交流推進計画」を策定した。本計画の目標として、(1)「『来てよかった』と真に満足していただけるもてなしの都市・姫路」の実現、(2)「1,000万人集客都市・姫路」の実現とさらなる拡大、を掲げている。 2015年度までの計画期間中に、姫路公園や動物園などの整備事業、既存の観光資源を活用した回遊ルートづくり、グリーンツーリズムの推進など、数多くの 事業が予定されている。今回開かれる「第25回全国菓子大博覧会・兵庫」もその1つである。
全国菓子大博覧会とは
全国菓子大博覧会は、日本各地のお菓子の展示・販売をはじめ、菓子職人による工芸菓子の披露、伝統や歴史の紹介など、お菓子に関するあらゆるものが一堂に会するお菓子の祭典である。
1911年に第1回が東京で開催されてから数年おきに開かれ、今回で25回目となっている。近畿では、1954年の京都以来、実に、54年ぶりの開催となった。ちなみに、松山でも、1931年に四国で唯一、同博覧会(第8回)が開催された。
当初は、業界の品評会の色合いが濃かったが、前回2002年に熊本城などを舞台に開催された時には、18日間で56万人を集めるなど、今では地域活性化イベントとしての側面も重要視されている。
姫路菓子博2008の概要
「第25回全国菓子大博覧会・兵庫(姫路菓子博2008)」は、「姫路城で花開く平成の 菓子文化」をテーマに、4月18日から5月11日までの24日間開催される。同博覧会の実行委員会では、60万人の有料入場者を見込んでいるが、前売入場 券の販売が昨年10月31日時点で約47万4千枚を数えるなど好調な出だしで、博覧会開催への期待の高さがうかがえる。
このところ、お菓子の生産額は少子高齢化の進行などを背景に伸び悩んでいるが、同博覧会が、菓子産業の活性化につながることも期待されている。
もともと兵庫県は、お菓子とのつながりが深い。豊岡市には、お菓子の神様として崇拝されている、田道間守を 祀る中嶋神社がある。また、神戸市は西洋文化の流入に伴って、洋菓子製造が盛んであるほか、南京町を中心に中華菓子も普及している。さらに姫路市は、江戸 時代に藩の施策として菓子作りが奨励され、「姫路菓子」の名で知られる菓子処である。このことに加え、2008年が姫路城完成400年目、世界遺産登録 15周年を迎える記念すべき年でもあることから、同市での開催が実現した。
様々な趣向を凝らした大会施設
博覧会施設は、「ときめきの舞台」、「創造の舞台」、「交流の舞台」の3つの舞台と、これらをつなぐ道「お菓子街道」で構成されている。各舞台では「見る」、「食べる」、「買う」、「作る」を楽しむことができ、入場者を飽きさせない仕組みとなっている。
まず、「ときめきの舞台」には、老舗菓子店が出店し、試食や買い物を楽しめる「姫路城下町」や、和・洋・中、様々な兵庫のお菓子が楽しめる「兵庫のお菓子館」などがある。
また、「創造の舞台」では、「野点庭園」でくつろぎながらお茶と和菓子を味わい、「全国工芸菓子館」では、和風、洋風、様々な工芸菓子を見たり、菓子職人の卓越した技に触れたりすることができる。
さらに、「交流の舞台」には、お菓子の製造過程が実演される「お菓子の工場」、緑と陽光が包まれた中でケーキやお茶を楽しみながら、ゆっくりとした時間を過ごすことができる「夢のスイーツカフェ」などがある。
実行委員会お薦めのスポットを2つ紹介しよう。1つ目は、「創造の舞台」にある「テーマ館」である。兵庫県内の和洋菓子職人が作成した、高さ1.75メー トルの超大型工芸菓子「姫路城」を見ることができる。もう1つは、「交流の舞台」にある「日本縦断!お菓子めぐり館」で、全国各地の菓子組合が出品した、 歴史と特色あるお菓子6,000品(予定)が展示され、一部はその場で購入することもできるそうだ。
「平成の大改修」がせまる姫路城
現在、姫路市では姫路城の整備事業を進めている。姫路城の北玄関にあたる野里門付近で進めている北部中濠復元整備工事は2007年度末に完了予定となっており、既に工事が完了している家老屋敷跡公園などと併せてPRし、観光客の誘致拡大を図ろうとしている。
また、2009年からは「平成の大改修」と呼ばれる、姫路城大天守の保存修理工事が始まる。工事期間中は天守が覆われて見えなくなったり、一部の施設が見 学できなくなったりするため、入場者の大幅な減少が見込まれている。姫路城は2006年度には90万人近い観光客を集めており、工事期間中の観光客の誘致 対策は重要な課題となっている。
もてなしの都市、姫路
姫路市では、「姫路に来て良かった」、「いつの日かまた訪れてみたい」と思ってもらえるような都市の実現を目指して、ソフト面の充実を図っている。
具体的には、美しいまちづくりの推進のための路上喫煙禁止に向けた取り組みや、もてなしの人づくりのための、外国語ボランティアの研修、観光ボランティアの育成などである。
今年の春は、家族揃って、お菓子の甘い香りに包まれた、もてなしの都市姫路に行ってみてはどうだろうか。
(辻井 勇ニ)