愛媛県資源循環優良モデル認定制度において優良循環型事業所に認定された企業を紹介する「愛媛の3R企業」。第2回は、下水汚泥を有機肥料に変えるシステムを導入した、株式会社西田興産南予環境保全センターをご紹介します。
株式会社 西田興産 南予環境保全センター
施設概要
場所 | 大洲市上須戒丁587-1 |
対象処理物 | 汚泥 |
処理方式 | 乾燥造粒方式 |
処理能力 | 21.4m3/日 |
ペレット製造能力 | 約4.3t/日 |
敷地面積 | 約1,722m2 |
厄介者を有効活用できないか
一般に、家庭や事業所などで発生する排水やし尿などは、下水管を通って下水処理場に運ばれます。これらは、微生物等の力によって浄化された後、きれいな水は川などに流されます。一方、残った下水汚泥は、埋め立て処分したり、焼却処分したりする必要があり、各自治体が多くの費用を負担しているのが実状です。最終処分場である「南予環境保全センター」を運営する西田興産では、この厄介な下水汚泥を有効に活用する方法を検討していました。
日本初のリサイクルシステムを導入
検討の結果、スイスのメーカーが開発したリサイクルシステムを日本国内で初めて導入することとしました。水分を多く含む汚泥から、2~4mmの粒状の「乾燥ペレット」を生成するシステムです。
現在、大洲市と八西地区で発生する下水汚泥の量は年間2,000~2,500tになります。域内の下水処理場から運ばれてきた汚泥は、このプラント内で脱水され、2軸ミキサーにより粒状に成形された後、約450℃のガスで乾燥されます。
含水量80%以上という状態から、最終的には6~10%にまで下がり、重量は5分の1程度になります。
地球に優しい地域資源循環型システム
でき上がった乾燥ペレットは、土地改良材や燃料などとしても活用できますが、現在は肥料として商品化されています。化学肥料のような即効性はありませんが、汚泥に含まれる有機・無機の養分が濃縮された、土壌にやさしい有機肥料です。成分検査を行った結果では、重金属などの有害な成分は基準値をクリアしており、安全なものであることが証明されています。
この肥料は、JAを通じて地域の農家などに販売されています。柑橘などの果樹や葉物野菜、根菜、何にでもマッチするそうで、高知の生姜栽培農家などにも広がっています。まだまだ金額的には小さいのですが、有機肥料としての品質の高さを実感し、リピーターとなる農家も増えています。
一般的な肥料が、原料の大部分を輸入に頼っているのに対し、同社の地域資源循環型システムによって作りだされる肥料は、地域内で製造・消費されるので、輸送にかかるエネルギーも削減できます。この点でも地球にやさしいシステムであると言えます。
南予地域に貢献する企業として
同社は、近年は事業多角化のため農業分野にも取り組んでいます。主力は水菜などの葉物野菜を、施設内の専用培土で栽培するシステムの開発です。ただ、土耕栽培ではないため、今のところ同社が作った有機肥料をこのシステムに活かす機会はないようです。しかし、同社の「農業で南予の活性化を」という思いは強く、これから農業分野への取り組みはさらに活発になっていくだろうと思われます。農業分野でも3Rがさらに進むことが期待されます。
(上甲 いづみ)