愛媛県資源循環優良モデル認定制度において優良循環型事業所に認定された企業を紹介する「愛媛の3R企業」。第5回は、食品加工残渣の堆肥化に積極的に取り組んでいる「株式会社いのすや」をご紹介します。
株式会社 いのすや
会社概要
本 社 | 〒789-1332 北宇和郡鬼北町出目188番地 |
代表者 | 代表取締役 西田 俊二 |
愛媛は全国有数の柚子の産地
鍋料理に欠かせない冬の味覚、「柚子」の全国の栽培面積は1,871.8ha(2005年現在)。高知(603.8ha)、徳島(305ha)、愛媛(186.8ha)の四国3県で約6割を占めています。
意外に知られていませんが、このように愛媛は全国有数の柚子の産地です。特に、県の南西部に位置し、四万十川の最大級の支流である広見川などの清流と森林を有する鬼北町では栽培が盛んで、晩秋になると町のあちらこちらで甘酸っぱいさわやかな香りが漂います。
1本の柚子の木からスタート
この鬼北町に、柚子などの柑橘類加工品を主に生産する「株式会社いのすや」があります。
当社の社名である「いのす」とは、伊予弁で柚子を意味し、代表取締役である西田俊二氏が1971年に1本の苗木より育苗事業に取り組んだことが当社の起源になっています。今でこそ、柚子は冬の味覚として広く認知され、その果汁はジュースなどの副原料として、外皮と果肉は菓子などの副原料として人気がありますが、当社の創業時には柚子の知名度は低かったようです。西田社長が関東以南を中心に営業活動に汗を流し、苦労の末、松山市にある菓子メーカーとの大口取引に成功したそうです。
食は安全でおいしくなければならない
当社は、安全でおいしい加工品を消費者に届けることを追求しています。
2001年に完成した新工場の建設に当たっては、土木関係の国家資格を持つ西田社長が設計段階から積極的に係わり、各種配管の設計や内壁の素材などにこだわった「防虫」、「防滴」、「防塵」対応の工場が完成しました。ただ、いかに優れた工場を建設しても、それを扱う人に安全衛生の意識がなければ意味がないとの考えから、社員教育にも力を入れています。
また、消費者のライフスタイルや嗜好の変化に柔軟に対応するため、小ロットで独創的な商品開発を行っています。現在の商品アイテムは約350種類に及び、「悪かろう、安かろうは作らない」が経営理念の1つです。
食品加工残渣の堆肥化
当社では、柚子などの柑橘類を原料とした様々な加工品を生産していますが、事業規模が大きくなればなるほど、加工工程で発生する残渣の処理が問題となります。産業廃棄物として処理業者に引き取ってもらうのが一般的ですが、コスト面や環境面を勘案すると、決して得策とは言えません。当社では、この食品加工残 を可能な限り有効活用する方法を研究しました。
具体的には、成分・商品開発を徹底して行いながら、残渣を極力出さないように柑橘類の利用度を高めるとともに、発生した残渣は、産業廃棄物として処分するのではなく、敷地内で堆肥化することとしました。出来上がった堆肥は、原料出荷者である農家などに還元しており、資源の地域内循環を実現しています。
また、加工工程で発生した汚水は、最新の水処理循環装置によって、河川に流しても問題がないレベルまで徹底的に浄化しています。このような取り組みが評価され、2002年に愛媛県から「優良循環型事業所」に認定されました。
地域産品を活用し、かつ環境に優しい当社の地域内循環生産システムは、地方で生きる企業の経営モデルの1つとなりうるのではないでしょうか。
生産者、加工業者、消費者の一体化
一般に、消費者は「いいものをより安く」を求めます。また、近年の「いいもの」とは、高品質のみならず、環境に優しいことを併せ持つ商品を指す場合が多くなっています。
「リサイクルにはコストがかかる。生産者、加工業者、消費者がそれぞれコストを負担することが重要である」と西田社長は言います。
リサイクル化を推進し、環境に優しい商品を作り出すには、生産者(農家)と加工業者の企業努力のみならず、消費者の協力が重要であることを感じました。
環境への負荷が少ない循環型社会の構築を目指して、生産者、加工業者、消費者が一体となった取り組みが望まれます。
(笠原 啓治)